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やるせない巳喜男映画の最高傑作

Netflixで3月1日に配信予定の成瀬巳喜男監督作 
 『銀座化粧』 https://www.netflix.com/title/81402115 
 『めし』 https://www.netflix.com/title/81402063 
 『浮雲』 https://www.netflix.com/title/81402076 
 『女が階段を上る時』 https://www.netflix.com/title/70063286
『乱れる』 https://www.netflix.com/title/81402109

成瀬巳喜男『浮雲』1955年公開

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太平洋戦争のさなか、ベトナムの占領地ではぶりをきかせていた男(森雅之)が事務員のゆき子(高峰秀子)と結ばれる。しかし戦後帰国した彼には妻があり、やがて女は外国人の愛人にまで堕ちていくが、それでもふたりは別れられないままズルズルと関係を続けていく……。
名匠・成瀬巳喜男監督が、くされ縁のままに堕ちていく男女の姿を冷徹に、緊張感を保ちつつ、しかしこれもまたひとつの愛の形であるとして描ききった傑作中の傑作。いわば彼の代表作であり、これを観ずして成瀬映画は語れない。原作は林芙美子の同名小説で、成瀬監督が林文学を映画化するのはこれで5作目。高峰秀子扮するヒロインが、堕ちれば堕ちるほど鮮烈に輝いていく素晴らしさは驚異的ですらある。(的田也寸志)

久しぶりになんとなく観ていました。これまで繰り返し観ている映画で一番かもしれないです。小津より黒澤映画より、この成瀬巳喜男『浮雲』ですね。私が一番好きな映画は。

この映画は本当に傑作です。自分が言うまでももないですが。以前見たときは、ここまでの傑作だとは思っていなかった。どこまでって、高峰秀子の色気ですね。ツンデレ。あの時代にして。この高峰秀子は女優としての存在感がありありと出ていて最高です。はすっぱな敗戦後の日本の女性の生き様を見事に演じています。それに、映画の時間だけで戦後の女の半生を描いている。脚本が水木洋子でした。

成瀬巳喜男監督、脚本水木洋子、原作林芙美子、主演高峰秀子と4点セットでの名作の中でも一番の名作です。すべてがいいんですね。ここまでセットになっている決定的な映画は今あるのかな。そこに森雅之がいて、助演として岡田茉莉子や加東大介がいるのですから、日本映画そのものですね。

多分に成瀬映画というより、林芙美子の意向(原作の水木洋子)のほうが強く出ているような気がします。戦地(南方)から戻った抜け殻の男に一途の愛を注ぐ女。森雅之はいい役者ですね。高峰秀子も愛しても愛しても虚しさ故に、また愛する女を好演しています。

『浮雲』のヒロイン幸田ゆき子が時間の流れの中で変化しているですね。いい映画は必ず映画の時間の中での登場人物の変化がある。最初の戦時中の植民地での出会い。米兵が訪ねてくるアパートでの富岡(森雅之)との語らい。岡田茉莉子演じる女のアパートでの対決の場面。義理の兄の金を盗んで旅館で逢いびき。そしてラスト屋久島へ。

「1980年代に吉永小百合と松田優作のダブル主演でリメイクが計画されたが、本作のファンであり、高峰を尊敬していた吉永が「私には演じられない」と断ったため実現しなかった」とWikipediaに出ていますね。吉永小百合はわかっていますね。でも、観てみたかったけど壮大な失敗作になりそうですね。



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