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涙で問題が見えにくい映画だった

『ブルー・バイユー』(2021/ アメリカ)監督ジャスティン・チョン 出演ジャスティン・チョンアリシア・ヴィキャンデルマーク・オブライエンリン・ダン・ファムエモリー・コーエン


解説/あらすじ
韓国で⽣まれ、3歳の時に養⼦としてアメリカに連れてこられたアントニオは、シングルマザーのキャシーと結婚し、娘のジェシーと3⼈で貧しいながらも幸せに暮らしていた。ある時、些細なことで警官とトラブルを起こし逮捕されたアントニオは、30年以上前の書類の不備で移⺠局へと連⾏され、強制送還されて⼆度と戻れない危機に瀕してしまう。キャシーは裁判を起こして異議を申し⽴てようとするが、最低でも費⽤が5千ドルかかることがわかり途⽅に暮れる。家族と決して離れたくないアントニオはある決⼼をする。

coco映画レビュアー

号泣映画であることは間違いないのだが、子役の泣く映画は反則だよな。それがカタルシスとなるのだが、そこで終わってしまうような気がする。テーマも家族映画なのだと思うが根本的な問題はアメリカの移民の里親制度があり、里親が子供と関係がなくなると市民権がなくなり強制送還させられる。それがエンディングにずらずら出てくるのでそれの告発映画だと思うのだが観ているときはそれは感じなかった。

韓国人差別の映画なのかと思ったほどだった。それは監督と出演も兼ねているジャスティン・チョンの私小説的映画だったのだろう。役者としてのジャスティン・チョンは魅力的で、なによりも娘役のシドニー・コウォルスケの演技と言えない演技が全てだった。名子役と言えるのかな。監督の手腕かな。

「ブルー・バイユー」というのは青い入江という理想郷。彼の母の子捨ての場所として記憶と結びついている韓国人青年の人生と言うような。かつて盗みを働いたためにビザがなくて働くのも苦労する刺青師であり、愛する白人の彼女と娘がいるのだが元夫である警察官から疎まれているというありそうなパターン。

ただこの白人警官は良識ある人と描かれているが同僚の警官が排外主義者であったために悲劇が起きる。まあストーリーが錯綜しているのだが、白人娘と韓国人父のきずなという映画だった。別の移民の女性との出会いは必要なかったかもしれない。彼女のポジションがよくわからなかった。同じアジア系ということでアメリカ在住中国人の苦しみも描いているのだと思うがわかりにくい(それは別テーマになっていく)。韓国人青年の苦悩だけで十分な気がした。

全体的に希望がない展開も映画としてはマイナスになるかも。最後のカタルシスが浄化になるのか?むしろその浄化によって問題も見えにくくなっているような。


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