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座頭市よりカッコいい敵役を演じた天知茂

『座頭市物語』(大映/ 1962年)監督三隅研次 出演勝新太郎、天知茂、万里昌代

勝新太郎主演の傑作時代劇シリーズ第1弾。下総飯岡の助五郎一家に草鞋を脱いだ盲目の居合斬りの達人・座頭市は浪人・平手造酒と知り合うが、平手は対立する笹川繁造一家の用心棒だった。

『サマーフィルムにのって』が公開されて、「午前十時の映画祭」で4Kデジタル修復版でリバイバル上映。一番最初の座頭市はモノクロだったのですね。シリーズ化されてどこから見て良いのか、わからなかったけど、座頭市見るならこれから見るべきと今なら言えます。そのぐらい出来が良い。

『サマーフィルムにのって』の主演の伊藤万理華が座頭市の居合の真似をしますけど、この映画からでした。座頭市が居合抜きで切るものが毎シリーズ違っていて、それを調べている人もいるとか(町山智浩情報)。『座頭市物語』では火が付いたロウソクを縦に真っ二つと酒樽でした。

そして、この映画では博打のシーンも見どころになっています。座頭市が盲目なのにサイコロを振る。ツボから出てしまうサイコロにヤクザが金をかける。見えているから誰でもわかる。それを一回やって、二回目には袖からこぼれたと言ってツボから出たサイコロを拾いあげてツボの中のサイコロで勝負すると座頭市がすべて金を巻き上げる。頭脳作戦ですね。阿呆なふりをして賢いのが座頭市です。ただのゴロツキではないとみせる。

この『座頭市物語』では何と言っても敵の用心棒、平手造酒を演じた天知茂のクールさとニヒルさですね。座頭市よりこっちを好きになる人もいるでしょうね。肺病で余命なくそれでも酒で紛らわして生きている。元は旗本か何かだったような役ですね。それがアウトローになってしまった。座頭市とは釣り仲間でお互いに剣術の凄さを知るのですが、その二人が最後に戦わなくてはならない。お互い敵味方の用心棒ですから。

居合抜きの名手座頭市が一回目の交錯で切れなかった。その演出が上手いです。平手造酒は病気上がりで、すでに相手のヤクザと対決していたのです。万全の座頭市とそこで互角なのです。平手造酒が万全の状態だったら座頭市を斬っていたでしょう。今のチャンバラ映画は一瞬で決まらないで何度も何度も切り合うのですが、やっぱそれはおかしいですよね。居合抜きの技が確かなら一瞬で相手と勝負がつくはずです。

そして、二回目の対戦。もう思いだすだけでも泣けますね。座頭市は斬らねばならなかった。平手の剣豪の為にも雑魚に斬らせるわけにはいかなかった。病魔にやられるなんてもってのほか、座頭市が剣豪の友情として斬らねばならなかった。剣術愛ですね。こういう映画はめったに見られるものでもない。敵役のほうがカッコいいのです。

病気持ちでめっぽう強いキャラはそれから映画やアニメでも作られたと思いますけど、天知茂の平手造酒以上のキャラはいないでしょう。だから、『サマーフィルムにのって』はボーイズラブの時代劇にしたのでした。『サマーフィルムにのって』を観たら『座頭市物語』をぜひとも見る必要がありますね。また、『サマーフィルムにのって』を観たくなるかも。


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