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一揆になると女性が強い!

『水俣一揆 ─一生を問う人びと─』(1973/日本)監督土本典昭



土本典昭が見つめた 水俣病患者たちの闘いの記録
土本典昭監督水俣第2作。水俣病裁判判決の後、生涯の医療と生活の補償を求めた水俣病患者のチッソ本社との直接交渉を、同時録音を駆使し生々しく記録した長編ドキュメンタリー。交渉にあたる行動を追う中で語られる、水俣病患者たちの人間としての尊厳をかけた闘いの記録。

水俣の公害訴訟裁判が初めて収められてドキュメンタリーだろうか。当時はチッソ化学工場の責任が患者や家族の訴えで明らかにされて会社側も罪を認めざる得なかった。今観ると被害者家族の追求の激しさだ。

それは原一男監督『水俣曼荼羅』でも感じられたのだが、その交渉の伝統はこの時期に培われてきたものなのかと思った。中でも女性の発言の激しさ、感情的になりすぎと今では思うが彼女らは少なくとも自分の言葉で語っているのが印象的なのだ。学者の言葉ではない生の言葉。

例えば水俣患者を出した家庭は結婚も出来ない。そして夫からも離縁される。子供も水俣病で八方塞がりの状況なのである。そこでチッソの社長の妾(二号だったかも?)にしてくれと訴える。本心はそこにあるのではないのだが、そんな言葉で寄り切っていく怖さがある。そうした個人の言葉を持っているのだ。社会的なルールの問題ではないと感じさせるのは、すでにチッソが社会のルールを破壊してしまったからである。

その後に男性陣の非難が後に続くのが彼らは立場上言っているのだろうとわかってしまう。論理的な言葉の、あまりにも聞き慣れた言葉だからだろうか。そこで妾にしてくれ!は迫力ある身体を張った言葉なんだろうと思った。そこまで追い詰められた姿がそこにはある。



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