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時代性が伺える川柳

『川柳うきよ大学 』小沢昭一(新潮新書)

「メール打つその指で揉め母の肩」「方丈記判る頃には介護四」……前作『川柳うきよ鏡』の大好評につき、より強力かつ新鮮な続編の登場です! ここに連なる川柳群は、平成の世をあざ笑ったり毒づいたりした民草のうめき声の記録となっていること、間違いありません。変動めまぐるしい情報過多の昨今、近い過去を振り返る世相の記録ともなっているはず。何はさておき、早速、一句一句の妙をどうぞご覧じろ。

出版社情報

『小説新潮』の川柳欄の川柳を中心に小沢昭一がいろいろ川柳を紹介している。投稿川柳は、時事川柳だろうか?解説を読まないと、わからない時事もあるが、江角マキコが国民栄誉賞とかそんなこともあったなあ、的な懐かしさ。

国民と皇室結ぶ前立腺  (2003.3月 柏市・松田まさる)

小沢昭一『川柳うきよ大学』

天皇(今の上皇)が前立腺癌の手術をしたのだった。小沢昭一も前立腺癌で亡くなっていた。

古枯(こがらし)や跡で芽を吹け川柳(かわやなぎ)  柄井川柳

小沢昭一『川柳うきよ大学』

柄井(からい)川柳は川柳を流行らせた人だが彼の川柳はあまり残っていないという。主に川柳のコンテストみたいなのをした人で「前句付け」という七七のお題をだして、それに川柳を付ける。例えば「あかぬ事かなあかぬ事かな」の前の五七五を考える。柄井川柳の辞世の句は、俳句だけど。

貧しさのあまりの果に笑いあい  吉川雉子郎

小沢昭一『川柳うきよ大学』

『宮本武蔵』を書くことになる吉川英治は、小説家に成る前は川柳作家であったと。『大正川柳』に投稿していた貧乏どん底時代。

娘のパンツ売れば払える地方税  (2003.12月 北坂英一)

小沢昭一『川柳うきよ大学』

いまならアウト!だろうな。まだこの時代は男のモラルも薄い時代だった。パンツを売る娘はブームだったんだろうけど。税金で悩まされるのは変わらない。

「ごはんだよ」呼んでも出ないビン・ラディン  (2004.1月 繁原幸子)

小沢昭一『川柳うきよ大学』

あまり川柳に規範を求める句よりはナンセンス句の方がいいという。ビン・ラディンも今の人は知らないかも。

カルチャーの男の席は隅にある  (2004.6月 和田秋生)

小沢昭一『川柳うきよ大学』

これはそうかもしれない。男は隅で生息している感じだ。

借りのある人が湯槽(ゆぶね)の中にいる  古今亭志ん生

小沢昭一『川柳うきよ大学』

落語と川柳は血縁関係にあり、枕に川柳が使われていたり落語家の面々も川柳句会をやるという。

通夜の客よく食いやがる寿しの鉢

小沢昭一『川柳うきよ大学』

歯切れを良くするために啖呵を切るのも一つの方法。

川柳が下手になるための五箇条

教えたがりに習うこと
他人の句を見ながら句をつくること
平素は他人の句などは読まないこと
決断力を持たず無難な句を作ろうとすること
言葉だけで句を作ろうとすること

小沢昭一『川柳うきよ大学』

全部当てはまるのではないか?

生きるのは良いものだと気づく三日前

小沢昭一『川柳うきよ大学』

特攻隊が作った川柳だそうです。笑えないよな。

鶴折りて恋しい方へ投げて見る

小沢昭一『川柳うきよ大学』

川柳にも派閥があって、柄井(からい)川柳『柳多留(やなぎたる)』と文学的な『武玉川』があるそう。現代川柳でも時実新子は文芸川柳をかと思うと下山弘『川柳のエロティシズム』という本も出ていたり多様性の中にあるという。小沢昭一はちょいエロ派かな。

馬鹿亭主いいかいいかと矢鱈きき  『誹風末摘花』

小沢昭一『川柳うきよ大学』

『誹風末摘花』は破礼(バレ)句というハレンチな猥褻句集で江戸庶民が楽しんだ。そういう好色川柳もあった。

生まれては苦界死しては浄閑寺  花又花酔

小沢昭一『川柳うきよ大学』

吉原の女郎が捨てられ祀られた浄閑寺の句碑の建つ川柳。

今はただ小便だけの道具かな

前立腺癌を患っている小沢昭一が好きな川柳。


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