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怨霊退治のジーナ・ローランズ様の幕開け

『オープニング・ナイト』(1977年/アメリカ/144分)監督・脚本:ジョン・カサヴェテス 出演:ジーナ・ローランズ、ジョン・カサヴェテス、ベン・ギャザラ

一人の有名舞台女優を通して、人が”老い”を自覚し始めた時に感じる焦燥や不安を描いた作品。ベルリン国際映画祭で銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞したジーナ・ローランズの演技は必見。カサヴェテス作品の中で本作が唯一「夫婦役」として共演している。

ピークを過ぎたスターが舞台女優としてもう一花咲かせようとするが(日本でもそういうパターンはよくある)、全盛期の女優を知るファンが事故死してその怨霊に祟られて、怨霊と対峙しながら最後は壮絶なバトルの末に退治して、舞台を成功させるジーナ・ローランズ様の最強伝説映画。ホラー映画じゃない?

その見方でも十分面白いと思うのだが、舞台がメタ・フィクション的な入れ子構造になっていて、女優とは何かを問題提起した作品か。演出家と原作者の求める女優像は、老いていく女優の姿なのだが、それに反抗して、老いを演じることを拒否する一人の女優と演劇のシステムとの闘いを描いているのだが、この役はジーナ・ローランズこそ相応しいというような自己の内面と劇までのプレッシャーやストレスがこれでもかというぐらいにしつこく描かれている。ジーナ・ローランズの演技に圧倒されるしかないのだが、興味本位で見ようとすると火傷をするかも。

『こわれゆく女』ほどではないが、これも狂気の世界で一人の女優が置かれている立場、現在の映画界でも様々な問題が出てきていると思う。そういうことに果敢に対峙していくのがジーナ・ローランズのヒロインなのだ。原作者や演出家の意図を超えてしまってまで演じようとしたものはなんなのか?それは若さということを売りにする女優のあり方なんだと思う。ハリウッドはそういうシステムが出来上がっている(日本もそうだろうが)。次々に新人女優が出てきてはスポイルされる世界だった。男優は年取ったなりに演じる役はあるのだが、女優はそういう人はほとんど一握りだろう。ジーナ・ローランズの魅力は、そういう若さやセックスアピールとは無縁の闘う女である部分かな。怨霊と闘う映画というのも間違いではないと思う。怨霊とは伝統的なシステムみたいなもの。


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