ペ・ドゥナの凛々しい刑事役
『明日の少女』(2022年/韓国)【監督】チョン・ジュリ 【キャスト】キム・シウン,ペ・ドゥナ
チョン・ジュリ監督は、『私の少女』を撮った監督だったのか?そのことがちっとも頭に入ってなかった。この映画もペ・ドゥナが刑事役で、ペ・ドゥナが少女役ではなく大人の女性に成長していて、むしろ少女をかばう役となっているのだった。
この映画もそんなストーリーなのだが、むしろペ・ドゥナ刑事役の続編のような感じになっているので、『私の少女』を観てから観たほうがいろいろと面白いと思う。
ただこっちは少女とペ・ドゥナ刑事はすれ違いになっている。二部構成とかかれてあるように少女が自殺してから、女刑事が捜査しているうちにいろいろな韓国社会の闇が見えてくるというストーリー。少女が入水するところでもう終わりなのかと思ったら、まだストーリーが続いたわけだった。
その撮り方がやはり上手いと思うのだが、二本分の映画を観せられたかったるさはあるかもしれない。しかし、事件があって捜査する中でいろいろなものが見えてくるというのはけっこうこの手のミステリーは当たり前で、事件のシーンをこんなに詳しくやらないのが普通なのだが、それが良いのか悪いのか微妙なところだが、ストーリー的には第二部の方が圧倒的面白く、自殺ということで闇も見えないままの社会の実態を暴くという監督の意図は強く感じた。ただの悲劇としてだったら、第一部の入水シーンで終わって泣けるでいいと思うのだが問題提起としての韓国社会の告発映画としては、監督の意図が充分伝わってきて良かったと思う。
それは成果主義という、それがいきつくところまで行くと資本家の奴隷状態のままに結局大勢の負け組と一握りの勝ち組社会の成れの果てなのだと思う。韓国は若者の自殺率がトップではなかったのか?そういう社会構造が例えば企業と学校が手を結んでいて、そこには教育庁とか労働省も若者の就職率だけの数字しか見ないので、どんなヤバい仕事をしているのか理解出来ない。今の仕事が理想論から外れる儲け主義になっているから、こんな会社はどこにでもあるというならそれまでなのだが、少しづつその反省があるのかもしれない。
それでも映画では問題は闇のままで終わっていくのだが、個人の力ではなかなか社会の不合理には立ち向かえないのだと思う。そういう認識を知らしめるのがこういう映画の役割とするならば、大いに価値ある映画だと言えるかもしれない。
ペ・ドゥナはなかなか凛々しいし、次々と問題に切り込んでいく姿は好感が持てる。ただそれが解決型の映画ではなく、一種の宙吊り状態に置かれるので賛否両論あると思うのだ。スカッとする映画ではない。ただ男子の奴隷状態の配送員に辛くなったら誰でもいいから相談しなさい、私でもいいからというセリフには涙が出た。ペ・ドゥナはそういう役が相応しいのだ。
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