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ペ・ドゥナの凛々しい刑事役

『明日の少女』(2022年/韓国)【監督】チョン・ジュリ 【キャスト】キム・シウン,ペ・ドゥナ

あなたの見えない眼差しを私は見ている

ある高校生の死をめぐる衝撃的な実話を映画化。
『私の少女』から8 年-チョン・ジュリ監督、待望の最新作!

2017年、韓国の全州(チョンジュ)市で衝撃的な事件が起こった。現場実習生として大手通信会社のコールセンターで働き始めた現役高校生が、わずか3ヵ月後に自ら命を絶ったのだ。この悲劇的な実話に基づく『あしたの少女』は、巨匠イ・チャンドンがプロデューサーを務めた『私の少女』で鮮烈な長編デビューを飾ったチョン・ジュリ監督の最新作。
8年ぶりにメガホンを執ったチョン監督は、ダンス好きの明るい少女が想像を絶する過酷な労働環境に疲弊し、ついには自死へと追いやられていく様を、迫真のリアリティをこめて描ききった。無垢な青少年を消耗品のようにこき使う企業の実態をあぶり出した本作は、日本よりもはるかに競争が厳しいと言われる韓国の社会システムの歪みをも告発する。社会の未来を担う存在であり、本来は守られるべき子供や若者が大人たちに搾取されるという理不尽な問題は、私たち日本人にとっても決して他人事ではない。

韓国を代表するスター女優ペ・ドゥナ×新星キム・シウン
労働搾取の犠牲者となった少女の悲劇と生のきらめきを描く。

本作は、2部構成となっており、ソヒが実習生としてコールセンターで働く前半のパートは、物語のベースになった実際の事件を忠実に再現。もう1人の主人公、刑事ユジンが登場する後半はチョン監督の創作で、韓国の労働問題を追及してきたジャーナリストらに触発され、ユジンのキャラクターを構築したという。1つの事件を2つの視点で描くというユニークな着想と、ユジンがソヒの足取りを追体験していく捜査のプロセスは、2つの異なる時間軸が共鳴するような感覚を観る者にもたらす。そして、それを象徴する、あるシーンの“光”をモチーフにした演出は、観客それぞれの想像力を刺激せずにはいられない。
2022年、韓国映画として初めて「カンヌ国際映画祭」の批評家週間の閉幕作品として選ばれ、「第23回東京フィルメックス」での審査員特別賞受賞の他、多数の国際映画祭での受賞を果たすなど、映画ファンから日本での劇場公開が待ち望まれていた作品が遂に公開となる。

チョン・ジュリ監督は、『私の少女』を撮った監督だったのか?そのことがちっとも頭に入ってなかった。この映画もペ・ドゥナが刑事役で、ペ・ドゥナが少女役ではなく大人の女性に成長していて、むしろ少女をかばう役となっているのだった。

この映画もそんなストーリーなのだが、むしろペ・ドゥナ刑事役の続編のような感じになっているので、『私の少女』を観てから観たほうがいろいろと面白いと思う。

ただこっちは少女とペ・ドゥナ刑事はすれ違いになっている。二部構成とかかれてあるように少女が自殺してから、女刑事が捜査しているうちにいろいろな韓国社会の闇が見えてくるというストーリー。少女が入水するところでもう終わりなのかと思ったら、まだストーリーが続いたわけだった。

その撮り方がやはり上手いと思うのだが、二本分の映画を観せられたかったるさはあるかもしれない。しかし、事件があって捜査する中でいろいろなものが見えてくるというのはけっこうこの手のミステリーは当たり前で、事件のシーンをこんなに詳しくやらないのが普通なのだが、それが良いのか悪いのか微妙なところだが、ストーリー的には第二部の方が圧倒的面白く、自殺ということで闇も見えないままの社会の実態を暴くという監督の意図は強く感じた。ただの悲劇としてだったら、第一部の入水シーンで終わって泣けるでいいと思うのだが問題提起としての韓国社会の告発映画としては、監督の意図が充分伝わってきて良かったと思う。

それは成果主義という、それがいきつくところまで行くと資本家の奴隷状態のままに結局大勢の負け組と一握りの勝ち組社会の成れの果てなのだと思う。韓国は若者の自殺率がトップではなかったのか?そういう社会構造が例えば企業と学校が手を結んでいて、そこには教育庁とか労働省も若者の就職率だけの数字しか見ないので、どんなヤバい仕事をしているのか理解出来ない。今の仕事が理想論から外れる儲け主義になっているから、こんな会社はどこにでもあるというならそれまでなのだが、少しづつその反省があるのかもしれない。

それでも映画では問題は闇のままで終わっていくのだが、個人の力ではなかなか社会の不合理には立ち向かえないのだと思う。そういう認識を知らしめるのがこういう映画の役割とするならば、大いに価値ある映画だと言えるかもしれない。

ペ・ドゥナはなかなか凛々しいし、次々と問題に切り込んでいく姿は好感が持てる。ただそれが解決型の映画ではなく、一種の宙吊り状態に置かれるので賛否両論あると思うのだ。スカッとする映画ではない。ただ男子の奴隷状態の配送員に辛くなったら誰でもいいから相談しなさい、私でもいいからというセリフには涙が出た。ペ・ドゥナはそういう役が相応しいのだ。

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