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「アウシュヴィッツ」映画レポート

今年になって4本もアウシュヴィッツ関連の映画を見たので、それぞれ特徴がありまとめて見ました。

『復讐者たち』

エンタメ要素がかなりある。それまでのやられるだけのユダヤ人ではなく、「ドイツ人皆殺し」というレジスタンスもの。結局ジェノサイドだから面白いと言えないような。教訓的な話ではあるのだが。

『沈黙のレジスタンス』

ヒーロー者のアウシュヴィッツ映画。パントマイムの神様がユダヤ人の子供たちを救うというストーリーは面白い。武力には芸術でという映画で好感は持てる。ただ一人の英雄話なんで、そこがどう処理されているか?なんだ。あまりにもスーパーマンだった。エンタメ要素半分という感じ。パントマイムが入ることでそれまでの悲痛なアウシュヴィッツものではなく、笑いが入るのが新機構。

『ホロコーストの罪人』

『ホロコーストの罪人』(ノルウェー/2020)監督
エイリーク・スヴェンソン 出演ヤーコブ・オフテブロ/クリスティン・クヤトゥ・ソープ/シルエ・ストルスティン

正統派アウシュヴィッツ映画。ノルウェーでもユダヤ人狩りがあったのかと知ることに。映画としてはユダヤ人家族離散の家族映画。三兄弟と父は収容所へ、母一人残されたけどその母もアウシュヴィッツへ。母との別れと兄弟の別れ。そして、老いた父と母がアウシュヴィッツのガス室へ。最初に次男の結婚式で幸せの絶頂から奈落に落とされる映画。次男視点で、ボクサーのチャンピオンだったのだ。収容所でナチス野郎をぶちのめすシーンは、あるもものの全体的には屈辱なシーンばかり。兄弟愛と親子愛の映画でもある。

『アウシュヴィッツ・レポート』

映画の面白さでは、これが一番良かった。アウシュヴィッツものの映画ではあるのだが、収容所の悲惨なシーンよりは逃亡劇映画。それもかなり攻撃的で赤十字にアウシュヴィッツの実態を届けるというサスペンス映画にもなっている。スパイもの映画の面白さ。ラストは現代の関わりを映した実写映像で訴えかけてくるものがかなりある。昔の話ではないのだと。

それぞれ新機構でナチスの犯罪を忘れないように毎年のように作られているアウシュヴィッツ映画だが、日本はどうだろう?今年、映画館で戦争映画観たのはリバイバルの原爆映画だけだった。あまり被害国からの映画が反日的だと公開されないのもあるのかもしれない。ドキュメンタリーで素晴らしい映画があることが救いか。今残さなければ証言する人もいなくなってしまうから、こういうドキュメンタリーは貴重だ。

映画ではなかったが先日TVで放送された、ETV特集「『玉砕』の島を生きて-テニアン島 日本人移民の記録」は長期取材でそれまで明らかにされなかった実態の証言を集めた見るも恐ろしいハードな内容のドキュメンタリーだった。こういうのは映画にならないのだろうな、あまりにも悲惨すぎて。

戦争映画でもエンタメ化して見せる方法もあり、興味深くなっているのだが、戦争の惨劇をそのまま見せる映画は最近減っているのかもしれない。そんな中で毎年巡礼映画館で公開されている塚本晋也監督『野火』はぜひ映画館で観て欲しい映画だ。


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