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「超新星」というより「流れ星」

『スーパーノヴァ』(イギリス/2020) 監督・脚本ハリー・マックイーン 出演コリン・ファース/スタンリー・トゥッチ

解説/あらすじ
ピアニストのサムと作家のタスカ―は、ユーモアと文化をこよなく愛する20年来のパートナー。ところが、タスカ―が抱えた病が、かけがえのないふたりの思い出と、添い遂げるはずの未来を消し去ろうとしていた。大切な愛のために、それぞれが決めた覚悟とは―。

題名の「スーパー・ノヴァ」は「超新星」の意味。ゲイ・カップルが旅の途中でよる姉家族の女の子に作家の男が「超新星」の話をするのだ。星は爆発して塵になるけどそれが地球に降ってきて人の身体を形作る。星の輝きは過去のもの。そういう光輝いていた自分を記憶してもらいたい。病気によって年老いて、わからなくなった自分は違った自分だという思い。自我が強いのだ。尊厳死の話だが、ヨーロッパ的なんだと思った。日本人なら成るように成るしかないと思うのでは。漱石の「則天去私」とか。

ゲイ・カップルの「終末論」。ゲイじゃなくても誰でも経験することだが家族の死期が近づいて、相手のことを慮りながら尊厳死したい男とそれを察知してしまった男が旅をする映画。病気で記憶を無くす作家は、すでに別れを決意していた。その途中で姉夫婦の家でのホームパーティ。

作家である男とピアニストのゲイ・カップルなんだが、作家がピアニストを演奏旅行に誘い出すドライブ旅行。以前から二人でキャンピングーカーで旅行していたようだ。作家はすでに末期で過ごすホームを決めていた。相手が寂しくないように犬もプレゼントして一緒に旅をする。

そこで尊厳死を選ぶつもりだった男は遺書を残していたのだ。それを見つけてしまったピアニストの男は、この旅が最初から別れの為の旅行なんだと知る。そうなることを薄々予感していたのだが、そういう経緯だった。ゲイ・カップルの場合、子供がいないから残される者は一人になるということなのだと思う。もともと独り身にはそのへんの感じが希薄なんだが。死ぬときは一人と思ってしまう。

私に愛がないというか、愛が面倒になったから一人なんだろうけど、そういうことは自然のなりわいなのだからと、達観して観ていた。母がボケ老人になって息子のことを忘れるんだとショックを受けたことはあったので、そういう気持ちもわかる。でも仕方がないと思うしか無い。愛情深い人は別れるのも大変だな、と観ていた。

年老いてからゲイ・カップルの映画は今までになかったが、青春時代ばかりではないということだ。ゲイに限ったことではないので、家族を愛するものは共感性が高い映画だと思う。最後にコリン・ファースト演じるピアニストが弾く曲がいい。


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