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シン・俳句レッスン97

今日の月ではないのだけど、満月ということで、ゴミ捨てに行ったときに煌々と月は輝いていたのだが、スマホを持ってなかった。寒かったので部屋に戻ったらもう出る気になれなかった。買い物に行って月が出ていたので写真を撮ったので画像入れ替えた。今日の夕方の月。

「高橋源一郎の飛ぶ教室」で坂本龍一の「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」というエッセイの話が出た。ポール・ボウルズの映画『シェルタリング・スカイ』の言葉だったのか。音楽が坂本龍一だったんだな。

先日三日月を見てその時に俳句を作ってアップしたけど、この満月の間は、月を見ていなかったのだ。月が知らない間に成長しているというか、時を刻み続けていたことに驚く。なんかすぐそこにあったのに知らずにいた世界が動いていた。そして、また満月をじっくり見たいと思った。二月の満月は、スノームーンなんだよな。雪がないのが残念だった。

浅みどり花もひとつに霞みつつおぼろに見ゆる春の夜の月                     菅原孝標女

雪の代わりに梅と月はわりと多いのは梅を雪に見立てているのか?

大空は梅のにほひに霞みつつくもりもはてぬ春の夜の月 藤原定家
梅の花にほひをうつす袖の上に軒もる月の影ぞあらそふ
照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜にしくものぞなき  大江千里
梅が香に昔を問へば春の月答へぬかげぞ袖にうつれる  藤原家隆
梅の花たが袖ふれしにはひぞと春や昔の月にとはばや  源通具
梅の花あかぬ色香も昔にておなじ形見の春の夜の月  俊成女

雪月夜わが心音を抱き眠る  本宮哲郎

今日の目標句。

雪月夜単音で弾くR.S.  宿仮

R.S.はRyuichi Sakamoto。日本名だと長過ぎるから。


現代俳句の海図

小川軽舟『現代俳句の海図 昭和三十年世代俳人たちの行方』から「小澤實」。小澤實も苦手なんだよな。アニミズムはいいんだけどやたら精神世界に入りすぎる感じか。俗がない感じ。小川軽舟の兄弟子だというから悪くは言わないだろうな。

神護景雲元年写経生昼寝  小澤實

生昼寝が俗なんだろうけど漢字だけで固い。「神護景雲元年」がわからん。西暦767年だという。何があった?特別な事件というより、その次代に寺でも写経が行われたということだろうな。この場合神社か?題詠が「神」ということだった。それで即興で出てくるというのが信じられない。

神の旅寒流の魚色深む  小澤實

この句に藤田湘子は若者らしさがないと批評したという。多分「俗」がないんだろうな。上の句には俗がある。

かげろうやバターの匂いして唇  小澤實

『砧』

小澤實の第一句集に絶賛した藤田湘子だった。「バター」が俗なんだろう。「かげろう」は聖性で。やの切れが伝統俳句で、中七が句跨り。この頃は取り合わせで作っているという。

ふはふはのふくろうの子のふかれをり 小澤實

小林恭二は小沢實の安定感を屈指の技巧派という。「音韻の魔術師」と言われたという。この線は好きだ。「音韻の道化師」を目指そう!

ふわふわのおふおふくろのおみおつけ  宿仮

小澤實の真髄は挨拶句にあるという。初めての感動を瞬時にして俳句に認める才能。『俳句の始まる場所』

これ読んだ足跡があった。あまり覚えていないのは相性が悪かったのだろう。そもそも俳句を横書きにしている時点で小澤實的にはアウト!だった。

山本健吉『滑稽と挨拶』で挨拶に重きを置く人で、わたしは滑稽の方に重きを置いているのかもしれない。テレもあるんだと思う。

小澤實の俳句観が見えてきた。俳句を立てるというのはそういうことなんだな。

貧乏に匂いありけり立葵  小澤實

『立像』

この句の場合立葵がそこにあるから即興で詠んだということか。立葵がないと意味不明だ。それが季語を立てるということか?季語は最初に立つものなんだ。

わが細胞全個大暑となりにけり  小澤實

『瞬間』

この場合「大暑」が立ち上がる。そこに挨拶という感じか?

雪月夜吐く息白くゴミ捨て場  宿仮

こんなもんか。ゴミ捨て場に佇んで月を仰ぐ。聖なるものに俗を合わせたのだが。

「俳句は謙虚な詩である」とは「無内容」でもいいから挨拶(場の座興とするべし)みたいな。そこに己の主張は希薄なのか?

残雪を弾き出てる熊笹ぞ  小澤實

芭蕉の「挨拶」と子規の「写生」ということだった。それはほとんど句会とか結社の中での俳句なんではないだろうか?謙虚になれない自分がいた。

『天の川銀河発電所』(宮本佳世乃)

俳句も平成ぐらいになると女性が多くなるのか?

パラフィン紙夏の名前をかんがへる  宮本佳世乃

「パラフィン紙」が俗で「夏の名前」が聖なるものの取り合わせだが、パラフィン紙が岩波文庫に昔付いていたのを思い出す。あれは紙を保護するためのものだったのか?日焼けしないためとか?これはなかなかの句だと思う。

パラフィン紙破け冬の岩波文庫 宿仮

ともだちの流れてこないプールかな  宮本佳世乃

ともだちが聖なるもので流れるプールが俗なんだが、流れてこないというのは水に溺れたとか。「大人には見えない友達」とか。けっこうホラー俳句なんだが、いたって本人は普通。けっこう出来る人かも。

ふゆざくら山のうしろのとんびの巣  宮本佳世乃

「ふゆざくら山」が聖なる場所で、とんびの巣が俗なのか。ふゆざくらだから人は集まってこないからとんびも子育てにはいいのか?

メタセコイアの葉は落ちて烏の巣  宿仮

いまいちか?

冬木立風が吹き込む烏の巣  宿仮

あたたかな橋の向こうは咲く林  宮本佳世乃

橋の向こうは彼岸だから、その先に桜の幽玄な林があるのだろうか?俗がない。聖性でまとめたのか。季語は「あたたかな」。風を感じるがなんか気味悪い風かもしれない。

焼売が真横にすべる春の山  宮本佳世乃

これも「春の山」が聖なる場所で「焼売」弁当で花見の俗っぽさか?

蚕豆の花があいまいに血の止まり  宮本佳世乃

「蚕豆」は「そらまめ」だった。季語だから聖性。血は邪悪なもの。生理とか?けっこう深いかもしれない。

ごつそりと舟虫がゐるシテの声  宮本佳世乃

これは海沿いの歌舞伎座なのか。鎌倉に材木座とかあるからそんな場所を連想する。これもなかなか上手い句かもしれない。幽玄の聖性に舟虫の俗ぽっさ。まあ、ごきぶりの一種だろうな。

水澄むやあとはバトミントンでいい  宮本佳世乃

これはわからん。「水澄む」が季語?秋の季語だった。バトミントンは運動会か何かの代表選手なのかな?きっとそうだ。出る種目がオタク系の人だからバトミントンぐらいの大会。やっぱこの人の俳句は好きかもしれない。

蜜柑山早く帰って早く死ぬ  宮本佳世乃

これは蜜柑の収穫でハードワークで部屋に戻るとバタンと死んだようになってしまうことだろう。そのへんがユーモアもあるし好きだった(俳句が)。

雪月夜単音で弾くR.S.
ふわふわのおふおふくろのおみおつけ
雪月夜吐く息白くゴミ捨て場
パラフィン紙破けて冬の岩波文庫
冬木立風が吹き込む烏の巣
雪月夜シュウマイ弁当かってゆく
雪月夜雪隠切痔ナプキンを
歌舞伎役者がたむろする歌舞伎町
バトミントンの羽浮かぶ雪月夜
無職ならバタンキューといっぱいか

今日は十句出来た。やはり好きな俳句があると模倣したくなる。

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