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老人映画はベテラン俳優の生きる道

『ファーザー』は2020年に公開されたイギリス・フランス合作のドラマ映画である。監督はフローリアン・ゼレール、主演はアンソニー・ホプキンスが務めた。本作はゼレールが2012年に発表した戯曲『Le Père 父』であり、彼の映画監督デビュー作でもある。

認知症の父とその娘。アンソニー・ホプキンスがアカデミー男優賞なので鑑賞。この映画の面白いのはホプキンスの記憶が曖昧になることで部屋が変化するところ。自分の居場所がわからなくなるのだ。最初は自分のマンション。次に娘の部屋。最後に老人ホーム。老いを映像で見せる。

もう一つ部屋に入れ替わり立ち代わり現れる人物。長女の元旦那だったり今の恋人だったり。介護人が変ったりするのも幻惑させられる。演劇の映画化ならではのストーリー。アカデミー脚色賞なのも納得。セリフのやり取りがコントなのだ。

その中で娘との関係性を描く。こういう映画は関係性で成り立っているので父親役のアンソニー・ホプキンスと娘役のオリヴィア・コールマンのやり取りが重要。老いていく父を見ながらやるせない長女の想いが伝わってくる。亡くなった次女の方に関心を寄せる父。長女はやかましい妻に似ていて、次女は父と相性が良かった。そんな次女に似た介護士にタップダンスを披露するアンソニー・ホプキンスのお茶目さ。

アンソニー・ホプキンスの服装が、最初は背広でまだ現役だという姿を印象付け。そのうちにパジャマ姿になり、最後はトレーナー姿で老いの姿を映し出す。昨日観た『これからの人生』のソフィア・ローレンもそうだが、時間による老いの演技力が見事だ。

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