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『バティモン5』のバチモン映画は大阪あたりで作れるかも。

『バティモン5 望まれざる者』(2023年/フランス、ベルギー/カラー/シネスコ/1h45/DCP)監督・脚本:ラジ・リ 出演:アンタ・ディアウ、アレクシス・マネンティ、アリストート・ルインドゥラ、ジャンヌ・バリバール

五輪に沸くパリ郊外の再開発で 行政と住民の軋轢が沸点に達する
パリ郊外の分譲団地には、所有者である移民とその家族が数多く暮らしている。その一画”バティモン5”は、老朽化の進んだ団地の再開発にゆれていた。おりしも臨時市長となった小児科医は、強圧的な手法で住民を追い詰めていく…。監督の実体験に基づく社会派映画。

日本でも2020年の東京五輪で公営団地の再開発で住民運動のドキュメンタリー映画があったが、それをフィクション化してエンタメ風に観せた映画はなかったと思う。フランスでは再開発の映画はたびたび観るが、ゴダールの団地映画もあったし、フランスはこういう団地映画の住民運動をテーマにした映画は多いと思う。

監督・脚本:ラジ・リは『レ・ミゼラブル』(2019年)の監督だった。この映画も地域住民が暴動を起こすという映画だったが、こちらは暴動騒ぎにはならずに怒れる黒人青年が市長の家を襲うという展開になっていく。

再開発で揺れる移民地域の団地で前市長がダイナマイトの爆破解体作業で突然死してしまい、代理の市長が強硬派で権力を傘に住民追い出し政策になっていく。市役所の住民相談課に勤める黒人女性がそれに反発して市長に立候補するのだが、その最中に団地が火事になってしまい、これ幸いと崩壊建築物ということで住民の強制立ち退きさせる。それ以前に住民とのトラブルもあり徐々にヒートアップしていく中で一人の黒人青年が事件を起こすのである。

住民運動をテーマにした映画だがエンタメとしても面白く作られていると思う。市長はそれほど悪人には見えないのだが、むしろ副市長の方が悪徳政治家のように見えたが、立場が逆転していく。そういう描き方も上手いと思う。

市役所に勤める女性は出来るタイプでその恋人はヤンキーみたいな感じなのだが、二人の意見も違っている。それぞれ違う意見があるのだが、それを話し合いではなく強硬策によって支配していくのでその反発が出てくるのだった。そういうストーリーを丁寧に描いていると思う。

住民側の方も団地の部屋を食堂にしたり、移民ばかりが住む団地なので管理も不十分で老巧化も激しい。最初のシーンでイスラムの祖母がなくなり、その葬儀を団地内でやるのだが棺桶を狭い階段に通すのに苦労したり(日本だと自治会館とかあるのだが)そういうところから住民内の繋がり(イスラム教の葬儀だったようだ)を観せたり、高級車にイタズラをしたりと、スラム化しているのだった。

代理市長に反発する市民課の女性は維新の橋下元知事に反発したれいわ新選組の大石議員みたいな感じだった。日本でもこういう映画を作る人はいないのかな。

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