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躓いてからが人生さ

『君たちはどう生きるか 』吉野 源三郎(岩波文庫)

著者がコペル少年の精神的成長に託して語り伝えようとしたものは何か.それは,人生いかに生くべきかと問うとき,常にその問いが社会科学的認識とは何かという問題と切り離すことなく問われねばならぬ,というメッセージであった.著者の没後追悼の意をこめて書かれた「『君たちはどう生きるか』をめぐる回想」(丸山真男)を付載.

宮崎駿の映画を見る前に原作を買っていたのに読んではなかった。今ではAmazonでも品切れ状態が続いているとか。自分はブックオフで100円(10円が消費税だった)で買ったのだった。たぶん「高橋源一郎の飛ぶ教室」で取り上げられていたと思う。その中で叔父さん文学の一つだと言っていたような。叔父さん文学は最近では乗代雄介の叔父さんが出てくる作品とか。世間とはズレている叔父さんがいて主人公はそこから多くを学ぶというパターン。

ただ原作と映画とはまったく別物だった。原作はコペル君(コペルニクス)と叔父さんからあだ名を付けられた中学生が自分で考え行動していく中で、ある日、友達を裏切ることになる(それがコペル君の挫折とそれを乗り越えていく成長物語になっている)。考えた行動が出来ない人間の弱さを知るのだが、そこから立ち直っていく青春ストーリー。叔父さんとのやり取りで哲学的対話やノートを通して、成長する青年と叔父さん文学の一つかもしれない。少年の成長物語であるが弱さも人間が持つものだと教える。軍国主義的な英雄ばかり求められていた時代に自分で考え行動していく少年を通して時代に流されないヒューマニズムを伝える。


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