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「You Don't Know What Love Is(あなたには恋が何か分かっていない)」聴き比べ

『失われた時を求めて』で絵画にしか興味なかった男が音楽で恋に陥る。それはあるかもしれない。絵画は理知的に理解しようとするが音楽は情念的なのだ。過ぎ去って消える音が過去(死)と結びつくからではないか?そして二小節を想い出すだけで、全体を想像できる。あの幸せの頃の全体像を。

そんなアルバムが青春時代に確かにあった。マル・ウォルドロン『Left Alone (Remastered 2014) 』。このアルバムはビリー・ホリデイ亡き後、彼女の伴奏者だったマル・ウォルドロンが作曲したタイトル曲。ジャッキー・マクリーンの泣きのアルトサックスで有名だが、今回はピアノ・トリオの方でスタンダードとして有名な「You Don't Know What Love Is」。

たぶんビリー・ホリデイの晩年にマルは伴奏したのだろう。その演奏は聴いたことはないのだが、このアルバムの曲から想像できる。ビリー・ホリデイのアルバムでは、オーケストラでの演奏。

同じく歌ものでは、定評のあるニーナ・シモンの「You Don't Know What Love Is」。歌詞(英語)も出ているので。

何よりも有名なのは、エリック・ドルフィーの『ラスト・デイト』でのフルート・ソロ。これはほんと名演中の名演。ドルフィーの最後の言葉「When you hear music,after it's over,it's gone in the air. You can never capture it again. (音楽は空(くう)に消え、二度と捉えることは出来ない。)」と共にアルバムに収められた伝説の名演。

ドルフィーの盟友コルトレーンも『バラード』でやっています。

コルトレーンのライバル、ソニー・ロリンズは『サキコロ』から。

女性ヴォーカルではなく、男性ヴォーカルではチェット・ベイカーの甘い声。

やはり同じ男性ヴォーカルだけど、トニー・ベネットはビル・エヴァンスとの共演盤。

新しいところで、スティングの「You Don't Know What Love Is」

何と言っても変わり種は、「You Don't Know What Love Is」を大胆にアレンジしたチャーリー・ミンガスの「What Love」。ここでもドルフィーとのやり取りが凄い演奏。

お耳直しにピアノとベースのデュオでケニー・ドリューと北欧のベーシスト、ニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセンの名演。


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