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太陽の元では陰もある

Sonny Criss"I'll Catch the Sun !"(Prestige/1969)

Sonny Criss – alto saxophone
Hampton Hawes – piano
Monty Budwig – bass
Shelly Manne – drums

アルト・サックス吹きのソニー・クリスには、チャーリー・パーカーという太陽神のような存在がありまして、ソニーがデビューした15歳の思春期のど真ん中でそんな存在を知ってしまったから、絶えずパーカーの陽の元で演奏していたようなものです。

パーカー系のアルト・サックス奏者は上はソニー・スティットからジャッキー・マックリーン、エリック・ドルフィー、キャノンボール、ルー・ドナルドソン、フィル・ウッズとひしめいています。かつて村上春樹がまだそれほど有名でもない頃(全国区ではなく一部のファンに知られるぐらいの時)ソニー・クリスのレコードのライナー・ノートを書いたことがあって、数いるパーカー系のアルト・サックス奏者の中で末っ子に置かれたのがソニー・クリスでした。パーカーが亡くなって後継者となるべく兄弟たちがしのぎを削っていく中で我関せずと朗々と吹いていた(泣いていた)。

でも果たしてそうだったのか。確かに明るい曲調のパーカーイズムの曲も多いですが、その陰でブルースもしみじみ吹いていたりするのです。共演者のハンプトン・ホーズもブルースの名手でしたが、ソニー・クリスもなかなかのブルースの名手であることを知ってもらいたいです。そして、その表通りには絶えずパーカーの太陽が照らしているのですが、裏通りの家に帰れば延々とブルースを吹いているのです。

何よりも変遷激しいジャズの世界で足掻いていたソニー・クリスのそんなブルースを聴くと、けっこう悩み深いアルト・サックス吹きなのだと思います。そして、晩年はヨーロパに活路を見出し、病気でもって自殺してしまう。


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