見出し画像

住吉大社は縁結びの神?

『源氏物語 14 澪標』(翻訳)与謝野晶子( Kindle版)

平安時代中期に紫式部によって創作された最古の長編小説を、与謝野晶子が生き生きと大胆に現代語に訳した決定版。全54帖の第14帖「澪標」。病気がちな朱雀帝は譲位し、冷泉帝(実は源氏の息子)の世になった。源氏も内大臣になり一族に勢力が戻ってきた。明石の君が女の子を生んだと知らせが入り源氏は喜ぶ。ある日源氏は住吉詣をした。偶然参詣していた明石の君は源氏一行の華やかな様子を目の当たりにし、自分をみすぼらしく感じる。病にかかった六条の御息所が自分の娘・梅壺を源氏に託し亡くなった。源氏は入内に向けて準備を進める。

Amazon紹介文

「澪標(みおつくし)」とは舟の航路を示す標識だそうだが、この帖は光源氏がこれからの政治的に進むべき道が示されている。その手段としての女性たちとの関係であることがよくわかる帖だった。

まず明石の君の娘を呼び寄せる(明石の君を呼び寄せるといするが実は大事なのは娘の方だった)のは、将来天皇(冷泉帝=光源氏と藤壺の子=東宮)の后にするためで、その教育係も呼び寄せる。橋本治『源氏供養』を読んでいるのだが、紫式部の怨念というのが藤原家の摂関政治にあって、それを表沙汰には出来ないのでこういう恋愛物語として描いているという。六条御息所の娘も養女にするのも有力者との結婚させる為で当時の姫君は政治の道具だった。

御息所は娘を斎宮として光源氏から遠ざけたのに、どうして娘を預けたのかよくわからない。死期が迫って判断力を無くしたとしか思えない。あと光源氏は姫だけではなく女官に近づくために手籠にしていたというのは橋本説。それもありうるな。とんでもないセックスモンスターであると思うと魅力的かも(悪の魅力というか)。

それでは「澪標」の表題となった和歌を見ていこう。須磨での大嵐や京への復帰を予言させた住吉大社にお礼詣出に、たまたまそこにお参りに来ていた明石の君と出会う(明石の君はもともと住吉大社が守護神)。

(光源氏)
みをつくし恋(こ)ふるしるしにここまでもめぐり逢ひけるえには深しな
(明石の君の返し)
数ならでなにはのこともかひなきになどみをつくし思ひそめけむ

光源氏の和歌は、元良親王の和歌を元にしている。

わびぬればいまはた同じ難波なる
みをつくしてもあはむとぞ思ふ



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?