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偽りの人の狂詩曲

『偽りの隣人 ある諜報員の告白』(韓国/2020)監督イ・ファンギョン 出演チョン・ウ/オ・ダルス

解説/あらすじ
1985年、国家による弾圧が激しさを増す中、次期大統領選に出馬するため帰国した野党政治家イ・ウィシクは空港に到着するなり国家安全政策部により逮捕され、自宅軟禁を余儀なくされた。諜報機関はウィシクを監視するため、当時左遷されていたものの愛国心だけは人一倍強いユ・デグォンを監視チームのリーダーに抜擢。デグォンは隣家に住み込み、24時間体制の監視任務に就くことになった。機密情報を入手するため盗聴器を仕掛けたデグォンだったが、家族を愛し、国民の平和と平等を真に願うウィシクの声を聞き続けるうちに、上層部に疑問を持ち始める。

日本で拉致事件が起きた「金大中事件」は日韓合作映画『KT』で公開され後でTVで観たけどあまり覚えていない。2002年公開だから、まだ韓国映画ブームになる前なんだろうな。今、作ったらどうなるんだろう?日本資本ではなく、韓国資本で作ったら面白い映画になりそうな、そんな予感を感じさせる今回の韓国映画です。

野党の大統領候補を軟禁して盗聴するという韓国の独裁政治の内幕。オ・ダルスはいつもは冴えない上司とか間抜けな役柄だけかと思ったら、けっこう真面目に大統領候補を演じていて好演。家族的な雰囲気がいい。全体的にコメディー調で始まってだんだん怖くなる感じは「韓国ノワール」と言われるサスペンス。

韓国映画のエンタメ映画の上手さというかハリウッドから学んでさらに面白くしている感じ。アクションは本場仕込みで内容はやっぱ全体的にウェット(感情的)なんだよね。監視人の弟が学生運動で拷問にあったり、大統領候補の友人が暗殺されたり、さらに娘が.......、これ以上は言えない。

この辺が上手い。感情的に揺れるシーンを折り込みながら、映像では恐怖感を感じさせる。それがコメディ仕立てになっているから、さらに面白い。ネタバレみたいになってしまうが最初はコメディ・タッチで、その後に悲劇の連続でガツンとやって、ラストに向けて悲喜劇的なハッピーで盛り上げていく。犠牲が出ないとそう簡単に民主化なんてならないのだと身を持って体験しているからこういう映画が作られるのか?

そのぐらい独裁政治は怖いし、盗聴や軟禁、拷問や破壊工作(国家反逆の捏造)、さらにマスコミ支配。それでどうして民主化になるのかという。権力側に裏切り者が出なければ無理でしょうみたいな。まあ映画だからね。やっぱ何人かは犠牲者を出すよね。

ドイツの映画で『善き人のためのソナタ』がありそれと似ているから日本の上映会社が買ってきたということだった。ちょっと作りが違うのは、韓国映画はエンタメになっているからかな。コメディ・タッチでもある。それでいて中盤の緊迫感は凄い。ラストは感動的フィナーレというハリウッドの王道パターンか?

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