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今日の写経

二十五歳

振子は二十五歳の時刻を刻む。

それは若さと若さと熱意の狂乱の刻を刻む。
それは碧天のエーテルの波動を乱打する。

それは池水や青草の間を輝き移動してゆく。
虹彩や夢の甘い擾乱(ぜうらん)が渉ってゆく。

鐘楼や、森が、時計台が、油画のごとく現れてくる。

それは二十五歳の万象風景の凱歌である。

(『金子光晴』「黄金虫より」ちくま日本文学全集)

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