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天安門事件の頃の不幸な女の子へのオマージュ作品なのか?

『天安門、恋人たち』(2008年/中国,フランス/140分)【監督】ロウ・イエ 【キャスト】ハオ・レイ,グオ・シャオドン,フー・リン,チャン・シャンミン,ツゥイ・リン

本作の監督を務めるのは、昨年『サタデー・フィクション』が公開され、世に名作を残し続ける中国のロウ・イエ監督。彼の作品は、中国国内での上映が禁止されるタブーにも果敢に挑み、観客だけに留まらず映画監督や俳優など業界内での人気も高い。なかでも『天安門、恋人たち』(2006)は、監督自ら学生として天安門事件に参加していた経験を持ち、事件直後から映画の構想を温め続けていた思い入れのある作品。

第59回カンヌ国際映画祭での上映後、中国国内での上映禁止と監督の5年間の表現活動禁止処分に見舞われるも、その間『スプリング・フィーバー』(2009)や『パリ、ただよう花』(2011)などの作品を意欲的に制作し、数々の名作を残し続けている。この幻の映画『天安門、恋人たち』が35mmフィルムからデジタル版に甦り、ふたたび多くの観客を魅了するに違いない。

ロウ・イエ監督のセンチメンタルな天安門の思い出的映画。たまたま青春時代が天安門事件の頃で日本だったら学生運動時の日活ロマンポルノに近いATG作品のような作品。天安門に直接関係していたというよりはその頃学生だった自由な空気の中でやたら欲望むき出しの彼女がいて誰とでも寝る女の子だったというような村上春樹が学生運動の頃を振り返るような内容か?

その頃の中国の学生の自由な気風は感じられるけど、映画に登場してくる人物たちは目的意識もなく、ただ欲望のままに振る舞う女の子の不幸な人生と一見成功者に思えた亡命者の女の子も突然自殺してしまうのが唖然として見ていた。彼女は何故自殺してしまったのか?そこが問題のようでもあり、不幸な人生を送る女の子の方がむしろ勝ち組だったのか?そんなことはないな。一番の勝ち組はこの映画を撮ったロウ・イエ監督自身であり、その分身のような女の子たちに振り回される学生の視線なのかな。

結局彼は天安門も中国の発展もベルリン亡命者の不幸も見てきたのでこういう映画が撮れるのだった。そう思えばありきたりな青春映画とも言えるし、中国ではそういう女の子は不幸になるというような教育的映画のように感じた。

ベルリンに亡命した女の子が突然自殺してしまうのは何故なんだろう?あの場所で天安門の懐かしさを追悼するような雰囲気だったのだが、彼女にしてみれば天安門の青春がかけがえのないものだったのかもしれない。それはもう一方との彼女の関係がやはりレズビアン的なものだったのだろうかと想像してしまう。つまり自分たちだけこんなに幸せになったのに中国にいる彼女の不幸を思いながらら天安門を振り返る姿に我慢ならなかったのかもしれない。


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