見出し画像

雪景色歌は凍えず春を呼ぶ瞽女のハルさん幸を呼ぶ声

『瞽女 GOZE』【監督】瀧澤正治【キャスト】川北のん,吉本実憂,中島ひろ子,冨樫真/2019年/日本/109分/エムエフピクチャーズ/DCP
良い人と歩けば祭り、悪い人と歩けば修行
生後3ヶ月で失明したハルは2歳のとき父と死別。盲目の為に七歳で瞽女になる、それまでは優しい母であったトメは、瞽女になった時から心を鬼にしてハルを厳しく躾ける。それは、母親が子を思う愛情の深さだった。その母親の優しさを気がつかないまま八歳でフジ親方と共に初めて巡業の旅に出る。その年、病が悪化してトメはこの世を去る。死別の際、ハルは自分を虐めた鬼である母親に涙一つ流さなかった。
苛酷な瞽女人生の中でハルは意地悪なフジ親方からは瞽女として生き抜く力を、サワ親方からは瞽女の心を授かるのである。ハルは言う「いい人と歩けば祭り、悪い人と歩けば修行」と・・・・
こうして様々な困難を経て親方になったハルは初めて幼い弟子ハナヨを向かい入れる、何も知らないハナヨを瞽女として生きていける様にとハルは厳しく躾をした時、自分が幼い頃母から鬼の様に厳しく躾けられる姿が走馬灯のように浮かび上がる──

岩下志麻の『はなれ瞽女おりん』より良かったかも。もっとも映画のスタイルが違う。どちっかていうと『竹山ひとり旅』の方に近いのかもしれない。瞽女は、ひとり旅じゃなく案内役親方弟子と数珠つなぎで歩いていくのだが。『はなれ瞽女おりん』は、男と関係を持った瞽女は仲間はずれにされて一人で生きなければならい掟みたいなものがあるのだった。

盲目で生まれたことで母親が占い師に瞽女にすれば長生きすると言われて鬼の特訓がはじまるのだった。「瞽女の星」だった。盲目なのに針の穴に糸を通すスパルタ教育。6歳の娘なんだから目が見えても出来るわけがない。雪の上での発声練習。石を詰めた籠を背負っての階段。。星一徹より厳しく怖い鬼母だった。

瞽女の弟子になったと思ったらその親方の虐めがひどい。それが修行だった。次の親方の優しさはなんなんだろう。それでこの名台詞が生まれるのだった。「良い人と歩けば祭り、悪い人と歩けば修行」。なんで昔は虐めがひどいんだろう。酷すぎる。特に案内役の嫉妬による虐め。映画だからだと思うがいまだったらパワハラどころか暴行罪だよな。実際に医者は訴えると脅していたのだが、あの話が実話なら恐ろしい。

映画のことで言えば占い師の女が小林幸子だった。それと子役は相変わらず上手い。子役の上手さでリアリティを感じた。そして、大人になった吉本実憂は、日本映画批評家大賞の新人女優賞を受賞!役者がいいとほんと映画に釘付けになる。

それと視覚障害者の映画だが、四季折々の情景が美しいこともこの映画の特徴だった。それは瞽女のハルさんが「次の世には虫になってもよい。明るい目さへもって生まれていきたい」という夢を瀧澤正治監督が叶えたのだろう。


この記事が参加している募集

#映画感想文

68,047件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?