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父権回復のための「共謀」家族映画

『共謀家族』(中国-2019)

解説/あらすじ
東南アジア、タイ。幼き日に中国からこの地に移り住んだリー・ウェイジエは、今は妻のアユー、高校生の娘ピンピン、まだ幼い娘アンアンの一家4人で幸せな毎日を送っている。インターネット回線会社を経営しているリーは、信心深く穏やかな人柄で、地域の誰からも好かれていた。『ショーシャンクの空に』が大好きなリーは、暇さえあれば事務所で映画ばかり観ている映画マニアでもあった。そんなある日、サマーキャンプに出掛けたピンピンが、そこで出会った不良高校生に睡眠薬を飲まされ、暴行の様子をスマホで撮られてしまう。ネットに動画を上げると脅されたピンピンは、自宅にやってきたその不良スーチャットと揉み合いになり、誤って彼を殺してしまう。スーチャットは、地区の警察局長の一人息子だった。出張から帰り、妻からすべてを聞かされたリーは、愛する娘と家族を守る為、完璧なアリバイ作りに着手する。常々「映画1000本も見れば、世界に分からないことなどない」と考えていたリーは、それまで観てきた映画のトリックを応用し、捜査の先の先まで読み尽くした完全犯罪を計画。警察の事情聴取に備え、妻子に想定尋問を繰り返すリーと家族との「共謀」の先にはしかし、予想もつかない結末が待っていた―。



これは中国本土で作られたハリウッドと対抗するような映画です。この映画も制作現場の背景を考えると面白いですよね。監督はマレーシア出身。敵役の女優は中国系のアメリカのスター。映画のオリジナルはインド映画で中国リメイク作品。そして主人公の父親もタイの移民でした。

中国のエンタメ映画はハリウッドのように数多くの資本が入っていてエンディングが非常に長い。そして、あの音で誤魔化すのは止めてもらいたいですよね。耳が悪くなる。さらにスローモーションの多用もありきたりで、いかにも作り物という感じがします。でも全然芸術的ではなく商品として興行的儲かればいいという映画になってます。脚本は面白いです。

なんたって警察幹部の息子が可愛い女子高生にレイプしてスマホビデオをネットで流すと脅迫するのですから。そういう体質はどこの国もあるのかもしれないけど中国は酷いですよね。ニュースでも官僚の子息がスーパーカーを乗り回して事故るとかやってました。そういうボンボンです。

この映画が面白いのは、映画好きの父親が娘と母の殺人事件を完全犯罪にして隠してしまおうとするのです。それも映画からヒントを得てアリバイ作りとか演出するのです。それが見事にシナリオ通りに行くはずが最後にどんでん返し。

最初は思春期の娘と仕事で忙しい父の齟齬から始まります。父親の威厳の欠如です。そして娘の悩みに対応するのが母親です。そのまま母親がヒロインにならないのは儒教的な中国だからでしょうか?むしろ敵対相手の警察の長官が女性長官で殺された息子の母親です。この母親はキャリアウーマンですけどやはり仕事人間だった。それで息子は甘やかしていたのです。教育の間違いです。そしてもう一方も無力だった母親に変わって父親が登場して、尊厳回復という映画になっています。さきほどの『少年の君』は親がダメ親なの少女と見捨てられた息子で二人のラブ・ストーリーでもあったのですが、この映画では家族映画です。それもハイウッドと張り合っていますね。そして興行成績も一番
だったようです。

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