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監督の私小説的ディストピア世界(ミステリー)

『ドント・ウォーリー・ダーリン』(2022/アメリカ)監督オリビア・ワイルド 出演フローレンス・ピュー/ハリー・スタイルズ/オリビア・ワイルド/ジェンマ・チャン/キキ・レイン/ニック・ロール

解説/あらすじ
完璧な生活が保障された街で、アリスは愛する夫ジャックと平穏な日々を送っていた。そんなる日、隣人が赤い服の男達に連れ去られるのを目撃する。それ以降、彼女の周りで頻繁に不気味な出来事が起きるようになる。次第に精神が乱れ、周囲からもおかしくなったと心配されるアリスだったが、あることをきっかけにこの街に疑問を持ち始める―。

coco映画レビュアー

最近の映画スターの名前が覚えられないというか、以前は映画スターの出演か監督で観る映画も決めていたが、最近は節操なく見ているな。暇なのもあるしシルバー料金だから。それでも映画の会員割引やサービスデーを使えば以前と変わらない料金で見られる。ただ二本立ての名画座が近くにないのが残念だ。以前は文芸坐とか早稲田松竹とか二本立ての名画座のお世話になったものだった。

映画館の話じゃなかった。それで役者というか女優でこの人は見たいと思っているのがフローレンス・ピューだった。『ミッドサマー』が当たり役のようだが、それ以前の『レディー・マクベス』が素晴らしかった。そしてストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』の4姉妹では一番良かった。

この映画も『ミッドサマー』風な不思議な世界を描いているのだが、それはハリウッドの50年代風のファミリー映画のような、誰もが憧れるちょっとセレブな生活の専業主婦の映画なのだ。『奥様は魔女』のような世界観だが、魔女狩りされるのは主役のフローレンス・ピュー演じる主婦なのだが、その世界がユートピアでありディストピアというハリウッドそのもののような気がした。

監督自ら出演して、そうかこの人は、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』のインディペンデント映画がデビュー作の人だった。この映画はイケてない女子高生がプロム(卒業パーティ)で騒動を起こすドタバタ喜劇もの。日本にプロムがなくて良かったと思ったものだが、最近はどうなんでしょうか?パーティというと不良の資金源の時代だったから。

この人はもともと女優で、ハリウッドのセレブで一番のセクシー女優にも選ばれたというので、監督の実話的なものが入っているのだろうか?

そういう夢のようなセレブの暮らしをする専業主婦なのだが、夫が何の仕事をしているか知るよしもない。ただ自分の幸福があればいいと考えるお気楽主婦たちのように見えるが、企業が家族的といいながらワンマンの社長で、その社長に気に入られようとするパーティがあったりするのだ。それは各家庭持ち回りのような、「酒と薔薇の日々」みたいなパーティだった。50年代の失われた世代のフィッツジェラルドの世界観か。

その世界は作られたユートピアであって、その構造がワンマン社長が目論むヴァーチャルな世界だった。最近の仮想空間と言えばいいのか。オーウェル『1984』のディストピア感にキューブリック『時計じかけのオレンジ』のような洗脳された世界なのだが、結末は脚本が破綻していると思う。やりたいことはわかるのだが。

そういうミステリー映画は、今ちょっとした流行りなのか?『ミッドサマー』もそうだったが、ジョーダン・ピール監督の『NOPE/ノープ』はそのミステリアスの部分で成功したが、どっちかというと前作『アス』に近いのかもしれない。

フローレンス・ピューはセクシー専業主婦で頑張っていたけどそれほどでもないような。共演者のハリー・スタイルズが良かったと思ったら監督の元彼だったのか?その破局も描かれていたのかと思うとなんとも(破局前のラブラブ時代だったような、この映画が破局の原因かもしれない)。細部がわかり難かったのは監督の思いが強すぎたのかもしれん。


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