コンテンポラリーダンスの凄さを知る
『ダンサー イン Paris』(2022年製作/118分/G/フランス・ベルギー合作)監督セドリック・クラピッシュ 出演マリオン・バルボー、ホフェッシュ・シェクター、ドゥニ・ポダリデス、ミュリエル・ロバン
オープニングのパリ・オペラ座の舞台裏の映像が素晴らしく、バレエももちろんなんだけど建物の中の構造をドラマチックに見せている。それでいきなり主人公のダンサーがすっころぶのだが、悲劇的なストーリーよりも喜劇として見せているのが良かった。
彼氏が他の女とのイチャイチャシーンを見て、骨折もして、もうバレエを出来なくなるダンサーなのだが、整体師の兄さんが自分も彼女が他の男と出来ていたと失恋する痛手でブロークン・ハートになり、ダンサーから慰められるシーンが面白い。この整体師は滑稽役のピエロ的存在だった。
クラシックバレエを諦めなくてはならなくなったダンサーがコンテンポラリーダンスで復活するまでを描いているのだが、ダンス映画として永遠の名作と残るだろうという予感させるほどダンスシーンが素晴らしかった。実際にヒロインを演じるダンサーはパリ・オペラ座のダンサーだと言うのだが、演技も素晴らしかった。でもダンスの見事さかな。
似たようなストーリーだったがリナ・クードリ主演『裸足になって』よりもダンス映画としてはこっちの方が完成度が高い。それはプロのダンサーを起用したこともそうなのだが、やはりコンテンポラリーダンスの振付師、鬼才ホフェッシュ・シェクターが本人役と共にコンテンポラリー・ダンスの振り付けもしているということだろう。コンテンポラリーダンスの凄さが分かる映画にもなっている。
クラシックバレエは天を目指すがコンテンポラリーダンスは地を這う。これはヒロインに言わせる言葉だが、だいたい古典主義は天を夢見るのだ。それが神だったり夢だったりするのだが、リアリズム芸術は地を這う人々を見るものだとも言える。そのバランスだよな。地ばかり這っていたらそこで終わってしまうし、夢ばかり見ていても現実的でないし。そのバランスだよな。
そこに喜劇的なストーリーで最後はハッピーエンドとなるダンス映画で誰にでも進められると思う。
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