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クジラ映画としてはいいんだけど

『52ヘルツのクジラたち』(2024年製作/135分/G/日本)【監督】成島出 【出演】杉咲花/志尊淳/宮沢氷魚/小野花梨/桑名桃李/金子大地/西野七瀬/真飛聖/池谷のぶえ/余貴美子/倍賞美津子

2021年本屋大賞を受賞した町田そのこの同名ベストセラー小説を、杉咲花主演で映画化したヒューマンドラマ。

自分の人生を家族に搾取されて生きてきた女性・三島貴瑚。ある痛みを抱えて東京から海辺の街の一軒家へ引っ越してきた彼女は、そこで母親から「ムシ」と呼ばれて虐待される、声を発することのできない少年と出会う。貴瑚は少年との交流を通し、かつて自分の声なきSOSに気づいて救い出してくれたアンさんとの日々を思い起こしていく。

杉咲が演じる貴瑚を救おうとするアンさんこと岡田安吾を志尊淳、貴瑚の初めての恋人となる上司・新名主税を宮沢氷魚、貴瑚の親友・牧岡美晴を小野花梨、「ムシ」と呼ばれる少年を映画初出演の桑名桃李が演じる。「八日目の蝉」「銀河鉄道の父」の成島出監督がメガホンをとり、「四月は君の嘘」「ロストケア」の龍居由佳里が脚本を担当。タイトルの「52ヘルツのクジラ」とは、他のクジラが聞き取れないほど高い周波数で鳴く、世界で1頭だけの孤独なクジラのこと。

鯨好きにはたまらない映画だと思うがラストが甘いので、その分減点かな。タイトルの『52ヘルツのクジラたち』は比喩なんだけど、52ヘルツで鳴クジラは仲間に声が聞こえないという『八日目の蝉』みたいなあり得ない異質性みたいなものかな。こういう動物を使った喩えも好きなんだが、その分『八日目の蝉』の二番煎じみたいな感じがしたのは、シスターフッド的に貴瑚の親友・牧岡美晴の役は『八日目の蝉』の小池栄子みたいな役だった。

クジラの鳴き声というとケイト・ブッシュのデビュー曲「ムービング」を思い出すので、クジラの鳴き声の後にそのメロディが聞こえてしまうという特殊体質だった。

映画は重すぎるのに最後はハッピーエンドみたいな、ちょっとそれはないんじゃないかなとも思った。まずヒロインの杉咲花演じる貴瑚の親から受けるDVやヤングケアラーの実態は、それだけで一つのテーマになりそうなのに、性同一性障害の安吾の問題も重ねていくので、複雑に成りすぎたかもしれない。性同一性障害で貴瑚(キナコ)を愛せないというのは、日本の閉鎖性なのかな、そんなに悩む問題なのかという感じがした。むしろ貴瑚のようなトラウマがある者のケアーの方が難しいと感じて一緒になるのは避けてしまうよなと思ったり。

あとAmazonみたいな所の御曹司は、そう簡単に手放さいだろうとも思った。『源氏物語』を読んでいるせいか、ああいう御曹司はしつこい性格なんだろうと勝手に思ってしまったのだが。

全体的には感動的な物語になっていると思う。ただ映画としてはファンタジーすぎて出来過ぎな物語だと思ってしまった。

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