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戦争が廊下の奥にたつてゐた

『渡邊白泉の一〇〇句を読む』川名大

戦後、ながらく俳壇から忘れ去られていた白泉だが、自身の予言通り半世紀後の今、新たに脚光を浴びている。 その白泉の生涯を丹念な取材により多くの新事実を明らかにし、さらに難解でもある白泉の俳句を論理だてて読み解いた、俳壇のみならず文学界に衝撃を与えること必至の書が刊行されます。 「白泉の俳句と生涯を端的に言えば、人間存在の根底に触れるような深い孤独感と憂愁感を伏流させながら、新しい多様な表現様式や文体を次々に創り出していった多面体だった、と言えよう。」(本文より) 著者プロフィール

「シン・俳句レッスン」で読み続けてきた白泉は今までになく衝撃を与えられて俳人だった。

これも図書館本なので返却期限が来たので感想を。「京大俳句弾圧事件」で勾留され、それ以後は俳壇から消えて行った白泉だが、死ぬまで俳句は作り続けていた。死後にその全貌が明らかになり、近年再評価された俳人である。

白泉の死後に全句集が出て一部の俳人から注目されて、新興俳句の弟子であった三橋敏雄の尽力によって再評価された新興俳句の雄だ。

白泉のもっとも有名な句「戦争が廊下の奥にたつてゐた」は今でも通用する新興俳句となっている。

川西大は『現代俳句』で書ききれなかった白泉の句について100句を取り上げて、若き日の改革者から戦時の弾圧、そしてそれ以後も俳句を作り続けた彼の生涯を明らかにしていく。

なお「京大俳句弾圧事件」で弾圧された俳人は他にもいるということなので彼等の再評価を望まずにはいられない。その先陣を切ったのが白泉なのである。

赤の寡婦黄の寡婦青の寡婦寡婦寡婦
白き馬海わたり来て紅の馬に
繃帯を巻かれ巨大な兵となる
戦場へ手ゆき足ゆき胴ゆけり
戦争が廊下の奥に立つてゐた
街に突如少尉植物のごとく立つ
花の家思想転変たはやすく
熊手売る冥土に似たる小路かな
おしつこの童女まつげの豆の花
谷底の空なき水の秋の暮


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