なさそうでありそうな日常

川上弘美(2005)「古道具 中野商店」新潮社
を読みました。

図書館の特設コーナーで思いがけず手に取りました。
古道具店なんてすきに決まってる…とタイトルと表紙に惹かれて読むことを決めました。

登場人物の関係がわかりやすく、女性の一人称語りでするすると物語が入ってきました。

途中、雨が降るのですが、その場面の描写がとてもすきでした。
「雨」というと登場人物の心情としては悲しいとかさみしいとか、涙を流して落ち込むような場面を想像します。ですが、この本では少しちがい、雨のいきおいにきもちのいきおいを重ねるような、きもちのシャワーの雨でした。慈愛ではない、でも愛の雨。包まれはするけれど、受け止めきれず流れていく、また、相手に受け止めてもらうことをまだ考えていない未熟な愛を感じます。

古道具店をめぐる人間模様が、日常的であり、非日常でもあり、どこか共感できる、そんな一冊です。

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