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舞台『咎人の刻印~ブラッドレッド・コンチェルト~』開幕!

天を睨みつける日々

ついにこの日が来た。
舞台の公演すら難しいこともある情勢の中、私はずっと気が気でではなかった。元々杞憂になりがちなタイプではあるが、2020年のあの状況を目の当たりにした今、「天は落ちるもの」だと更に杞憂になってしまった。

とにかく、無事に初日を迎えてほしい。
この舞台に賭けてくださった皆さまが報われるよう、そして、舞台化を喜んでくださったお客さまに笑顔でいてもらえるよう。
原作者は初めての舞台化ということで、慣れないながらも色々なことに全力投球したり空回ったりしたり、ぶっ倒れそうになっていたりした。
今思えば、何かに没頭することで、落ちるかもしれない天への不安を掻き消したかったのかもしれない。
昔から心配性だしネガティブ思考で、喜びが大きければ大きい時ほど、それは容赦なく襲ってくる。舞台化の喜びは筆者的にも大きなものだったようで、天が落ちるかもしれないという自分のネガティブ思考との戦いだった。

その中でも救いだったのが、舞台チームの頼もしさだった。
筆者は舞台を作り上げる現場にお邪魔したりもしたのだが、皆さま、本当に真摯に芝居に向き合っておられて、始終感服しきりだった。

まずはブロンズトロフィー(初日開演)を解除

さて我々がいるのは、無事に初日が公演終了した世界線である。
まずは、初日開演という実績(トロフィー)が解除された。
このまま、千秋楽まで無事に駆け抜けられることを祈る。

因みに、筆者はゲネプロを拝見して感激した後、初日の公演も拝見した。
舞台はその日ごとに変わる面白さがある(アドリブもあるし)ので、それを見逃したくないという気持ちも当然あったが、何より、お客さまの反応を窺いたかった。

結果、劇中で面白いところは笑いが起き、息を呑む展開の時はしんと静まり返り、閉幕後はグッズ販売にずらりとお客さまが並んだ。
笑顔のお客さまを見て、私にまとわりついていた不安がすっと軽くなったような気がした。
お客さまの満足感は、どんな良薬にも勝るのだ。
筆者はロビーの柱に同化しつつお客さまのお声に耳を傾けたかったのだが、個人誌のサイン本の在庫がみるみるうちになくなっていったので、慌ててサイン本の追加をしにバックヤードへと向かったのであった。

舞台『咎人の刻印~ブラッドレッド・コンチェルト~』のここがすごい

さて、縁の下で本当に大勢の方に支えられている本舞台だが、観劇される皆さまが最も気にされているだろう作品・キャラクター面に触れたい。

本作は原作1巻の内容を踏襲しつつ、原作2巻から登場する高峰さんを登場させたり、あるキャラクターを取り巻く状況にオリジナル要素を盛りつけたり、東雲ちゃんが東雲君になったりしている。
脚本・演出を担当されているのは『キ上の空論』の中島庸介さんだ。
緩急が付いた構成が絶妙で、実際に舞台になったところを拝見して唸らされた。
キャラクター間の空気感、そして、異能を使うなんていう非現実的な部分も上手く表現してくださり、演出補佐の保坂麻美子さんとともに、本当に素晴らしい舞台を作り上げてくれたと思う。

原作は殺人鬼である神無君の視点を通して物語が展開されるのだが、舞台もまた、神無君を中心に物語が進む。
小説ではテキストのみであったが、舞台は演者である松田昇大さんの熱演もあり、彼の悲哀をより色濃く感じられること間違いなしである。あの、一見軽薄ながらも繊細なキャラクターが大変よく表現されていて、見る者の感情を揺さぶってくる。
そして何より、舞台の彼には原作以上の苦しみが待っている
殺人鬼となってしまった彼の苦しみや悲しみ、そして、どう立ち直ってどう償っていくのか。舞台ならではの彼の人生をご覧頂きたい。
羽のように身軽でありつつも、切っ先は鋭い殺陣にも注目だ。

そして、神無君の運命の相手である御影君。
演者である赤羽流河さんは高身長で、咎人バディは原作と異なるサイズ感である。それゆえの美味しさは舞台でしか味わえないので、是非とも味わって頂きたい。
あの長い呪文詠唱と魔法をどう表現するのか気になっていたところだが、バチバチにカッコいい振り付けと詠唱っぷり、そしてド派手な演出を見せつけられて思わずのけぞった
あの、作中で最も非現実的な存在である御影君が3次元に存在していることに、筆者は驚きを隠しきれない。赤羽さんは初舞台で初主演という初尽くしであったが、この難易度が高いキャラクターを見事に演じていて凄い。

神無君と御影君の関係性もまた、とても良く表現されていた……。
多くを語ると蛇足になってしまう気がするので、未見の方はその目で確かめて頂けると幸いだ。

また、主役のバディ以外もハチャメチャにすごい。
黒猫執事のヤマト君は古賀瑠さんが演じる猫耳美少年になっているのだが、大変愛らしい姿を見せてくれるし、ダークな物語の清涼剤になっている。
筆者は、ヤマト君が登場する度にニコニコしてしまう。

キャスト発表時に原作読者さまが一番ビックリしたと思われる東雲『君』だが、筆者の感想を正直に述べよう。
東雲くんはいいぞ……。
まず、演者の川隅美慎さんが殺陣の名手なので、刀捌きがめちゃくちゃカッコいい。刀慣れしている。
『東雲』は原作では女性キャラクターなのだが、中身が漢(オトコ)なので性別変更に違和感がない。そして、原作以上に正義に燃えた憤怒っぷりを見せてくれる。
そして、一人称私男子に弱い方はご注意願いたい。うっかりすると心臓が止まる。というか、東雲君は東雲ちゃんにない艶っぽさを持っているので、舞台でしか摂取できない東雲成分がある。

原作では、ヤマト君に次いで愛されキャラと化している高峰さんだが、舞台でもカッコよくギラつきつつも、愛されキャラになっている。
演者である伊勢大貴さんとアンサンブルの方々で演じるコメディパートは必見だ。
勿論、アクションシーンも凄い。指弾とピストルから繰り出されるスタイリッシュな殺陣に着目して頂きたい。

そして、ケイ!!!!!
原作では少ししか登場しない、神無の友人にして日常の象徴だった彼。
それが舞台ではあんなことやこんなことになっている。
多くを語るとネタバレになってしまうので言えないが、舞台版のケイには要注目だ。オリジナル要素モリモリだし、その存在感は影の主役といっても過言ではない。
演者である杉江大志さんのアドリブが巧みで、毎回の楽しみでもある。

最後に、原作1巻のラスボスである時任さん。
この時任さん……動くぞ!
殺陣マスターの中村誠治郎さんが演じている(本舞台の振り付けも中村さんである)ので、原作の10,000倍くらい動く。ハチャメチャに動く。
因みに、舞台の御影君も前衛さながらの動きをするのだが、この師匠に鍛えられたのなら不思議ではない。整合性が取れている。
すごい!つよい!演説がかっこいい!の三拍子が揃っているので、立ちふさがった時の絶望感がすごい。

アンサンブルの皆さまも、アクションがすごいわ(アクロバットもあるよ!)掛け合いが面白いわで、隅々まで見どころ満載だ
チケットはまだ販売しているので、原作を読まれた方も未読の方も、バチバチにカッコいいアクションアツいブロマンスを味わいに来て欲しい。

オリジナル要素も原作者監修済です!

原作の読者さまで、舞台オリジナル要素を不安に思っておられた方がいらっしゃったようなので(メディアミックスあるある)、ここで断言しておこう。

本作は原作者監修済みである。
脚本の時点で、原作者である筆者が設定と物語のギミック回りをチューニングさせて頂き、誠に僭越ながら、必要に応じて加筆や修正をさせて頂いている。
中島さんが執筆された普段の筆者がやらない展開を、どうやってこの作品らしくチューニングしていくかを考えたりと、なかなか刺激的で勉強になる監修作業だった。
シナリオ執筆経験はあれど舞台脚本を弄るのは初めてだったのだが、舞台サイドの皆さまが、筆者が手を加えたところも上手く料理してくださって、完成品を拝見した時は五体投地をする勢いだった。
原作者の意図やこの作品の良さを活かしつつ、舞台ならではの作品に仕上げてくださった皆さまに心より感謝を申し上げたい次第だ。

残るは13公演!

当舞台は全14公演で、残りは13公演だ。
公演を重ねるごとに舞台が研ぎ澄まされていくので、どう変化していくのかが楽しみである。
舞台チームの皆さまが最後まで無事に駆け抜けられることを心より祈っているし、これからご覧になられるお客さまやリピーターさまも、無事に見届けられるようお祈りしている。

さて、初日の物販の人気っぷりに圧された筆者。どこかのタイミングでこっそりとグッズを購入しに行きたいところだ。

因みに、原作者の個人誌『咎人の休息』が物販にこっそりと紛れて頒布中だ。104頁の小説本で、巖本先生のカッコよくも妖艶な装画が目印である。
今のところ、会場限定販売で初の個人誌なので、是非会場にいらっしゃってお手に取って頂けると幸いだ。

また、パンフレットにもコメントを寄稿させて頂いているので、舞台の思い出に一冊いかがだろうか。

また、期間中は紀伊国屋書店新宿本店さん2階にて、原作小説とコミカライズを大展開して頂いているので、別の世界線である原作に興味をお持ちの方は是非ともお手に取って頂けると幸いである。


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