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つながれ! #GoTo読書 !

今、全国の書店と図書館で『#GoTo読書』というキャンペーンが拡がっている。
外出自粛が促される中、47都道府県のご当地小説をお客さまのお手に取って頂き、本の中で旅をしてもらおうという内容だ。
『news zero』や『ZIP!』にも取り上げられ、その勢いはとどまることを知らない。

さてこの企画、未来屋書店石巻店Twitter担当・成田さんが発起人だ。
私も書店訪問をした際にお会いしたことがあるのだが、奥ゆかしくも気配りが出来る方であった。あの時は、まさかテレビ越しに再会出来るとは思っていなかったので、なんとも感慨深い気持ちでインタビューを眺めていた。
企画の詳細は、未来屋書店さんのサイトで非常によくまとめられているので、お目を通して頂きたい。

企画の概要を拝見した時から、これは非常にニーズがあると感じていた。
外出自粛をされているお客さまにとって、想像の旅は最大級の娯楽になるだろう。それに、年々斜陽の一途をたどる書店さんにとってもチャンスなのではないか。
何とかこの動きを拡げられないかと思った私は、大変お世話になった三省堂書店神保町本店さんへと企画を持ち込んだのである。

神保町といえば、日本で最も本に飢えた人々が集まる街だ。
古書店が密集し、大型の新刊書店がいくつも並んでいるという特殊な土地だ。
「本の企画は本の街でもやらねば!」
という使命感を胸に、懸け橋になるべく、かつての戦友である文庫担当の書店員さんたちにGoTo読書のプレゼンを行った。その結果、大変やる気に満ちたお返事を頂けて、橋渡しの第一歩を踏み出せたのであった。

しかし、三省堂書店神保町本店が激務なのを私は知っている。大規模なフェアなので、展開にも時間がかかるだろう。
そう思った私は、二日間に亘って顔を出し、ボランティアとしてひたすら帯の作成と帯巻きを行った。
地味な作業ではあるが、いかんせん、量が多いのでなかなか終わらない。
自著をほったらかしにして、私はひたすらフェア対象作家さんの帯を巻いていた。主に、暖房がないバックヤードでの作業だったので寒かったが、かつての戦友たちと会話を弾ませることも出来て楽しかった。

作業は大変だった。
だが、私は楽しかった。
かつて、書店員として働いていた時の感覚を思い出し、すっかりのめり込んでいた。
ようやく売り場にフェアを展開出来るという段階になって、その高揚感は頂点に達していた。
そうだ。私は棚を作るのが好きだったんだ。
本はただ陳列すればいいわけじゃない。お客さまに手に取って頂くことを意識しなくてはいけないのだ。
お客様の動きをシミュレートし、左右上下の本との相性を考えながら調整していくのが重要だ。それらを意識することで、フェア台は二倍、三倍にも輝くのだから!

担当書店員さんの指示を仰ぎ、時にはアドバイスをさせて頂き、お客さまが見守る中、ようやく棚が完成した。

ラインナップは文庫フロアの書店員さんのチョイスである。
なかなか渋めだが、神保町はそういう街なのだ。
非常によく考えられていて、展開完了と同時にお客さまが棚前に集まってくださった。

一部ご相談を頂いたので、妖怪好きの私は峰守ひろかず先生著『金沢古妖具屋くらがり堂』を推させて頂いた。
神保町と妖怪は相性がいい。それに、学術的な見地から妖怪を書かれる峰守先生のご著作は、知識をお求めになる神保町のお客さまに合うと思ったからだ。

版元のフェアをそのまま展開するというのではなく、書店が地域のお客さまのために選書したフェアを展開するという意味では、GoTo読書は、書店さんの「おもてなし」が込められた企画なのだなと実感した。

未来屋書店グループの中でも個性があり、棚を見ているだけでもなかなか楽しい。
仮に、そこに自著が入っていなかったとしても、入れてくれと懇願するのは野暮というものである。
書店員さん達が、お客さまのニーズや棚のスペースなどを熟考の結果、現在の棚になっているのだから。

さて、大仕事を終えてすっかり疲れ果てていたが、満足感が私を包んでいた。
やっぱり、書店員って楽しい。
まあ、頑張り過ぎて腱鞘炎とテニス肘で腕が動かなくなって辞めざるを得なかった人間なので、作家業が多忙なうちは復帰出来ないだろうが……。

そして、三省堂書店神保町本店さんがGoTo読書に参戦したことにより、未来屋書店さんからメッセージが!

石巻店さんには、素敵な企画を立案してくださったことに感謝を。
そして、商品企画さんのツイートには、私もつい、貰い泣きしてしまった。
「みんなの #GoTo読書 」って、すごく良い響きだ……!
グループを越えて書店同士が繋がれて良かった……!
そして、その懸け橋になれたことが本当に光栄だった。
私の提案に乗ってくださった三省堂書店神保町本店さんにも感謝……!
入社したころからのお付き合いだった文庫担当さんはすっかり頼もしくなって、今や立派過ぎるほどの書店員に成長していた……。

この企画を通じて、われわれ書店員(私は元書店員だが)の「おもてなし」が、旅をしたいお客さまに届きますように。
本のソムリエは、本のツーリストビューローにもなれたのだ。

願わくは、三省堂書店神保町本店さんが参戦したのを皮切りに、さらに多くの書店さんが立ち上がってくだされば……とも思っている。
この企画にはまだまだ伸びしろを感じるし、何より、各書店さんがどんな「おもてなし」をされるか拝見したいのだ。

因みに、個人的にCoolだと思っているのは、未来屋書店北戸田店さんだ。
虫に特化したGoTo読書を行っているので、虫好きの方は要チェックである。


さて、あまりにも書店員充してしまったので、ここで記事を終わらせてもいいのだが、一応、小説家としてのnoteなので、三省堂書店神保町本店さんのGoTo読書に入れて頂いた自著の紹介も置いておきたい。


自著の中で神保町と言ったらこれ!!!
神保町を舞台にしたビブリオファンタジーだ。
珈琲の香りを感じながら、海外文学の世界に飛び込んで頂ければと思う。

豊洲に浮かぶ蜃気楼の町で起こる奇妙な事件の話。
怪異の原因を紐解くミステリーよりのホラー。
文蔵2021.3より連載再開。次巻が解決編となる予定だが、本書のみでも楽しめる仕様だ。

池袋を舞台に、アウトロー達が異能バトル!
『池袋ウエストゲートパーク』や『デュラララ!!』などから、池袋といえば、若者とアウトロー!というイメージがある。小説ではないが、最近のコンテンツであれば『ヒプノシスマイク』にもその傾向がうかがえる。
4月発売の3巻でも池袋にヤバいやつらが集まるので、これを機に是非。

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