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日記 休日に生まれ変わる。

 7月1日(月)

 7時起床。休日。激しい雨が降っている。夜中から降り続いている。ここ最近は毎日雨が降っていて、常に身体がだるく、気分も落ち込み、なんか調子がよくないなあ、なんにもやる気が起きないなあ、という気怠い気持ちを引きずりながら誤魔化しながら、どうにかこうにか日々をやりすごしていた。本もあまり読めていなかった。疲れていると本が読めなくなる、というのが自分のなかのバロメーター。週末、『百年の孤独』が飛ぶように売れていたけれど、いったい何人の人が最後のページまで辿り着けるのかねえ、などと意地悪な気持ちを抱えながら、無心でレジ打ちしていた。それぐらい心が疲れていた。ひとりの時間が欲しかった。今日は一切の予定がない自由な休みだ。相変わらず太陽の光が恋しくてたまらないけれど、休日に生まれ変わろう。ゆっくりと回復していきたい。

 大雨のなか出勤していく可哀想な夫を見送り、掃除洗濯。鈴木真海子の新作を流しながら。最近は日本のヒップホップをゆるゆると聴いている。耳心地がいいのだ。そのなかでもまみこは特に、いい。
 雨の隙間を縫って買い出しへ。本屋にも寄る。散々悩んで、文庫本二冊購入。スーパーで食材を大量に購入し、ほうほうの体で雨が降り出す前になんとか帰宅。購入したのは津村記久子『サキの忘れ物』、永井みみ『ミシンと金魚』。

 アーケイドファイアを流しながら台所仕事。塩味玉、ブロッコリーの酒蒸し、キャベツサラダなど仕込みながら、並行して夕飯の準備も進めておく。久しぶりにのんびりと台所に立ったような気がする。雨、降ったり止んだり。ときどき雲間から光が射すとうれしい。

 おやつの時間。スーパーで購入したシュークリームとソイラテ。数日前から、ゆっくりと時間をかけて朝吹真理子『きことわ』を読み返していた。大好きな朝吹真理子の、うすーいこの一冊なら最後まで読み切れるかな、と思って。なんだか読書のリハビリみたいだ。ひらがな多めのやわらかな文章がとても心地よくて、じんわりと骨身に染みこんでくるかのよう。やっぱり好きだ。微睡みながら過ごす怠惰な午後のあわい時間。そんななかにもパンチの効いた一文がぽーいと転がされていたりして、朝吹真理子の小説はほんとうに油断ならない。人は皿洗いの果てに死んでゆく‥‥‥。

 昨夜、父親は食事の後片付けをしながら、この切れ目のない皿洗いの果てに老年があると言った。切れ切れにはさまれる立食パーティーだのシンポジウムのあとの外食だのがあるとしても、結局、皿を洗って死ぬ運命にある。人は皿洗いの果てに死んでゆくものなのだと言った。

朝吹真理子『きことわ』


 夕飯。豆腐と生姜のカレー、千切りキャベツとサバ缶のサラダ、パプリカとトマトのスープ。野菜たっぷり献立。相変わらず長谷川あかりさんレシピのお世話になりまくっている。Mトーナメントを観ながら食べた。野球がない日に麻雀の対局があっているとなんだか得した気分。仕掛けまくるコバゴーに、夫「つまらん男よ」。

 食後、寝っ転がって津村記久子『サキの忘れ物』読む。表題作含む何編かだけ。めちゃくちゃ面白い。ちょっと感動するぐらい面白い。鼻が高くてとがった「サキ」も、遠い東の島国で自分の存在をこんなに素敵な物語のキーパーソンにしてもらえるなんて、きっと草葉の陰で喜んでいることだろう。そして併録の『喫茶店の周波数』、笑った。津村記久子の人間観察力よ。天晴れ。

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