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おもしろいことは普通の生活の中に詰まっている 『いってらっしゃーい いってきまーす』

幼稚園に通いだして半年が過ぎた娘の、一番の興味は「こども」。予防接種の話だろうと、待機児童の話だろうと、ニュースで子どもの声が流れれば釘付け。学校が映れば釘付け。とにかく同年齢から、少し上までの子ども一挙手一投足を、ものすごい目で見ています。

そんなわけで、「いってらっしゃーい いってきまーす」は大好きな一冊。
保育園に行き、保育園で過ごし、商店街に寄って家に帰るまで、が、子どもの視点で実に詳細に描かれています。

主人公は「なおちゃん」。お父さんが絵描きさん、お母さんはオフィスワーカーのようです。朝はお父さんが送り、帰りはお母さんが迎えに来ます。お父さんと乗る自転車も、お友達とのあそびも、先生とのやりとりも、そしてお母さんと歩く帰り道も、なおちゃんは全てを心から楽しんでいます。

お母さんが買い物している間にお店のオウムに話しかけたり、塀の穴から覗いたり。「子どものころってこんな風だった」と、忘れていた情景が思い出されて驚きます。
なおちゃんの言葉を中心に物語は進むのですが、その言葉が出てくるリズムというか、息継ぎも、「そうそう!」とうなずきたくなるほどリアル。

特別なことなどなくても、日常の至る所に驚きと楽しさが満ちているんだなあ、と、こちらの日常を過ごす目も洗われるようなすてきな絵本です。
(2014.10.29)

 文:神沢 利子 , 絵:林 明子 『いってらっしゃーい いってきまーす』(福音館書店)

※10年後の私からのコメント
大好きで何度となく読まされたはずの絵本を、大きくなって「そうだっけ?」とか「実はそんなに好きじゃなかった」とか、あっさりぶった切ることもある娘。でも、この本はいつだって「大好き」。8年経っても、この本の話をすると幸せな時間が流れる。

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