「あなたに安全な人」木村紅美著、河出書房新社刊

なんだかおもしろい小説である。もちろん、150ページなので、けっこう一気に読めてしまう。特に章立てがあるわけでもないし、時間的にも1年足らずの、コロナの絡んだ男と女のストーリだ。
普通に生まれたけど、変な役回りを受け持ってしまった人生を経験している、それぞれの二人。男は警備員のバイトをしていて、デモに参加した女性を死なせてしまったらしい。女は学校の先生でいじめにあった子どもを(たぶん)自殺させてしまった。そんな二人が、便利屋の男を呼んで風呂場の排水口の掃除を頼むところから始まり、数か月を経て、一緒に住む状況になったような、ならないような。
読み方によっては、ハッピーエンドなのかもしれない。コミュニケーションのできる、お互いを信頼できる二人という状況が、便利屋とその客の間に、生まれたのだから。
この本も、夜NHKラジオを聞いていて、だれだったか「もっとも素晴らしい小説」と言っていたことから読んだもの。どこにどう感動したとかいうよりは、こんな小説があることに不思議さを覚えたことから、短いけど、メモに残しておくことにした。

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