内田百閒


呉の住宅街の隅の古民家。人が1人入れるくらいの扉が開いてる。のれんをくぐる。
いつも静かな古本屋甘茶書店さんで見つけた
内田百閒 ちくま日本文学


「長春香」

…解っても解らなくても、それが何のつながりになるかと云う様な事は、後日の詮議に譲るとして、ただ棒を嚥み込む様に覚えて来ればいい。解らないと思った事でも、覚えて見れば、解ってくる。覚えない前に解ろうとする料簡は生意気であると私は宣告した。

独逸語の教え子である長野初さんへの言葉。

ほかにも色んな短編が載ってるけれど
いつもどこか不思議な味わいのお話。


土手を歩いてるうちに少しずれた世界へ入り込んでいったりいつも通りの時刻にやって来て薄暗い玄関の土間に立つ女の話。

…あらしの滓のような雲のきたなく流れた空の下から、変な風が、ふいふいと吹き降りて来たり、

…ある夜、坊主枕の実に入れてある小豆の粒のすりすりと擦れ合う音を気にしながら、有明行灯の光が、薄い飴湯の様な色に漂って居る部屋の中を
まじまじと見廻して居る内に、消したままにしてあった釣洋灯の石傘の裏に、三味線草の実の様にうようよと集まって咲いて居る優曇華の花を見つけて、私は急に恐ろしくなり…

優曇華の花
うどんげのはな
クサカゲロウの卵。
仏典で三千年に一度花を開くとされる優曇華にたとえられ、吉兆または凶兆とされる。

摩訶不思議さが文章のあちらこちらで噴火して
妙な肌触りの世界へ引き摺り込まれて行く。
魚の内臓の苦みを美味いと感じる様な小説?
随筆?集。

解説
赤瀬川原平さんの百閒さん評

この世で出会う事柄の一つ一つを珍しく思う
子供の目、宇宙人の目を持っている…

百閒さんの写真を見つけた原平さん

庭の石とか草とか生えているところに何かはんぱな姿勢でしゃがみ込んで何かはんぱな方角を振り向いている。眼鏡をかけた実に不機嫌な顔

まるでジョン・ウェインを裏返して裏返して無限に裏返した顔付き

百閒さんを裏返した様な赤瀬川原平さんの解説がこれまた妙な味わい。

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