「友達なの?」

僕、青西瓜は転校生だった。
親の仕事の都合で、何度も何度も転校をするような子供だった。
家が近いということもあり、僕が小学校に馴染めるように、と、
先生の指令もあって、最初に友達になったのがTくんだった。
否、友達ではなかったかもしれない。

ある日、どこかから帰って来て教室に入ろうとした僕。
その時は多分夏で、
廊下の窓とかも全部開いていたので、中の様子が確認できた。
そこでTくんが数人の女子に囲まれて、こう聞かれていた。
「ねぇ、Tくん、青西瓜ってオマエの友達なの?」
僕はハッとして、教室のドアのところに隠れた。
何だか怖くて入れなかったからだ。
そしてTくんの反応は「う~ん……いやぁ……」と、
ハッキリ『友達ではない』とは言わないものの、
あまり好感触とは言えない反応だった。
僕はドアに隠れて立っていると、後ろから来たクラスメイトに
「青西瓜、何で教室の中に入らないの? 何かあるの?」
と言われ、そこに僕がいたことがTくんにも、数人の女子にもバレた。
その時のTくんのリアクションは正直あんまり覚えていない。
かすれ笑いを浮かべていたような、そんなことをぼんやり覚えている。
これが僕が小学生の頃の話。
そして時が経ち、中学生になり、リベンジマッチが訪れる。
地域の都合上、小学校の時のクラスメイトとは別の中学校へ進学した僕。
そこでなんと全く同じ状況に出くわしたのだ。
違うことは、Tくんではなく、Yくんということだ。
何かイニシャルの形も似てるなぁ。

ある日、どこかから帰って来て教室に入ろうとした僕。
その時は多分夏で、
廊下の窓とかも全部開いていたので、中の様子が確認できた。
そこでYくんが数人の女子に囲まれて、こう聞かれていた。
「ねぇ、Yくん、青西瓜ってオマエの友達なの?」
僕はハッとして、教室のドアのところに隠れた。
何だか怖くて入れなかったからだ。
そしてYくんの反応は

「当たり前じゃん、友達に決まってるじゃん、馬鹿じゃねぇの?」

僕はドアに隠れて立っていると、後ろから来たクラスメイトに
「青西瓜、何で教室の中に入らないの? 何かあるの?」
と言われ、そこに僕がいたことがYくんにも、数人の女子にもバレた。
その時のYくんのリアクションはよく覚えている。
照れ笑いを浮かべ、
「いつからそこにいた?
 何も聞いていないだろ? それより便所行こうぜ」
と言って、僕の肩を組んで、そのまま廊下へ一緒に出て行った。

僕はその君のことばに救われた。
もしまた微妙なリアクションなら立ち上がれなくなっていたかもしれない。
この日のことを、僕は一生忘れない。