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傷だらけのリセマラ

「大丈夫か!?スカー!」治癒術師が傷だらけの傭兵に声をかけた。
彼女の傷は古傷からたった今負った真新しい刀傷まで数え切れない。
「放っといてくれ、リセ」スカーが眉を潜めて言った。
「そりゃあ君の種族の治癒能力は知ってるよ。だからといって、痛みまで無くなりはしないんだろ?」
リセは許可もなしに、刀傷に治癒のルーンを押し当てる。
「……おせっかいめ。こんなことをしてもアタシの報酬を安くしてやったりはしないぞ」
本当のところ、スカーは早く死にたかったのだ。

異世界転生は、最近は流行りすぎて何番煎じなのかもわからないが、俺はそれに選ばれた。
付与される能力は選べるが、生まれる境遇、種族などは分からない。
それならと俺は「無限に転生が出来る能力」を選んだ。
不遇の生まれならさっさと死に、次の人生をやり直せるように。
俺は知っている。生まれガチャはあまりに強力だ。
ならば、試行回数で叩き伏せよう。

……思うようにいかない。

【続く】

#逆噴射小説大賞 #逆噴射プラクティス

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