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アナザーヘイブン

積雪の上を異形のマシンが這っていた。
スパイクとビスのダンゴムシのような装甲と、ムカデのような機脚を無数に備えた、列車よりも大きく長いマシンだった。

走っていくそれの脇腹が開き、中から三人の人間が降りる。
マシンの装甲と似た分厚い耐環境スーツで、性別は愚か、体格や目鼻立ち、髪や肌の色も分からない。
スーツに『A-2』とプリントされた人間が雪に脚を取られ、無様に転んだ。
「しっかりしろよ、ジグ。新米の前で格好がつかねえヤツ」
無線通信で『BV-1』とプリントされた人間が声を掛ける。
「新米、ジグを掘り出してやれ」
指示を受けた人間『C-X』は黙って『BV-1』の言うとおりにする。
足手まといを捨てていく余裕はない。
彼らは使節団だ。ハザードの後生き残ったコロニー、シェオルとの交流を築くための。

「通信内容は本当なんですか?」
『C-X』は作業を終えると、ジグに尋ねる。
シェオルがニライに送ってきたという通信のことだ。

【続く】

#逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞

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