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ハイドパークで二度死ぬ。

加速されたジョニィの視界の中で、無数の雨粒がゆっくりと光っていた。
ネオンに照らされ、まるでシャンデリラのようだった。
地上344mの高さから、今まさに雨粒より速い速度で落ちていかんとするジョニィの脳神経はスパークを起こし、なんとかこの窮地から逃れようと全力で走った。
しかし、吐き出されるのは「何故こんなことに」という呪詛ばかりだ。
注文に応えるように、ジョニィの記憶は4Dフィルム編集され、28時間前の事の起こりを写し始める。

警官という職業が果たしてこの23世紀に必要なのか、ジョニィ・ケイバーは詰め所で自問していた。
危険思想は半世紀も前に「治療」された。
それでも人が居ないと不安だという市民の要望で、彼は街に立っているが、勤めはじめて10年、彼が書いた報告書には「特になし」とだけ書かれている。
詰め所の窓ガラスが下手なドラムを叩き始めた。予報通りの嵐がロンドンにやってきたのだ。

【続く】

#逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞

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