[創作]座敷わらし

最近は洋風の家ばかりで和室が少ないと嘆いております、ワタクシ、座敷わらし。出現する機会を失いつつあります。見れば幸せになるという伝説は、本当に伝説に。そして伝説へといえば、格好はいいが、死活問題なので。格好つけるよりも明日のご飯のために『出る』のである。

最近はユニ○ロとか、G○Pとか可愛い服があるのに相変わらずのちゃんちゃんこ。仕方がない、着替えてLDKのタワマンとやらに行ってみるか。

日が暮れ、"ぼわ~ん"と出現。ぼわ~んの効果音も自分で言ってみる。なんでも、ワンオペの時代、自己完結だ。

ちゃんちゃんこは時代遅れのようなので、コジャレたチョッキを着用。ファストファッション、1980円、分割、カードで。

"で、で、で出た!"
待ってましたのセリフ。を、待ち続ける。が、主は起きない。ベットの脇に栄養ドリンク、タバコが散乱している。そっか、熟睡してるんだね。お仕事ご苦労様。

次の部屋へ移動する。なんと、畳があるではないか!張り替えたばかりの"い草"の匂い。畳のカビ臭い匂いもたまらないが、新品は絶品である。

"で、で、出た!"
を、待ち続けるもなにも、主が帰ってこない。コジャレたチョッキを着て待っているのに。コジャレたチョッキを見て欲しいのに。

一向に主が帰ってこないので、ネットで物件について検索してみた。この丸い緑色のキャラクターが、裸なのが気になる。

『空き家?』
リノベーションをして、次の入居者を待っているようだ。いいな~こういう畳のある家、住みたいな~。

『決めた!』
まずは不動産屋に就職して、この家を押さえる。そして、お金を貯めてここに住む!


後日談
A子『あそこの空き家、電気消えているのに、ぼわ~んっと、チョッキを着た人が出るらしいのよ』
B子『えー怖い』


不動産屋に就職したものの、座敷わらしの特権で、タダで住めると気付き、退職。事故物件のような噂が経ち、入居者が決まらず、してやったりの座敷わらしであった。

『やっぱ、ベットはいいな~』

(おわり)

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