(詩)夕焼け雲

寂れた港町の
日暮れの中を歩きながら
今日も一日年老いてゆく

空には夕暮れの雲
あの雲の連なりの向こうに
あの夕焼けの彼方に
今も少年の日のわたしが
待っている気がしてならない

誰かを待って
放課後にひとり取り残された
教室の隅で
今ひざ抱え
あの夕暮れの雲を見ている
少年のわたしは

今こうして
寂れた港町の日暮れの中で
しずかに年老いてゆく
わたしのことを
今ひざ抱え、少年のきみは

こんなわたしをやさしく
そっと許してくれるだろうか
ほほにつたう涙に
夕映えをにじませながら


夢多き少年の日に帰る道は
この地上の
どこを捜しても見つからず
あるのはただ今日も
空に夕暮れの
雲の連なりだけ
歩いてゆくことの許されない
夕焼け雲の道だけ


寂れた港町の
日暮れの中を歩いていたら
ふいに、帰りたくなった
とぼとぼ、とぼとぼ
夕焼け雲の道でもいいから
帰りたかった

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