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ぼくはラヴホテル

ぼくはラヴホテル
午後からたそがれにかけて
なんともいえない哀愁を漂わせ
夜には派手なネオンライトで闇を照らし
世界中の善男善女から毛嫌いされる建物さ

たしかに客の中には
売春や犯罪や修羅場や
出会って一時間もしない奴等や
子供たちを裏切る愚か者もいるけれど

そういうやつら、ばかりじゃない
だってぼくの名前は「ラヴ」ホテル

好きで好きでたまらない恋人たちや
真面目な夫婦や
物静かな老夫婦だって訪れる
彼らは安アパートや
子供が大きくなってきたりして
他にふたりきりになれる場所がなくて
仕方なくぼくのもとへやってくる

入ってくる時
照れ臭そうにしたり
何度もキョロキョロ見回したり
いそいで駆け込んだり
何か悪いことする訳でもないのにさ

そういう時ぼくは
思いっ切りサービスしてあげる
ベッドを回転させたり
部屋中恥ずかしい位鏡張りにして
リラックスさせてあげるんだ

そしてそれからふたりを
ちょっと泣きたい気分に
させたりしてみせるのさ

ほんとうは子供が心配なので
早く帰りたいところを
雨なんか降らして、もう少し
ゆっくりさせてあげるんだ

ぼくはラヴホテル
愛がなきゃ、生きられない

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