(詩)夏の前のスケッチ

蝉が留まる前の静けさに
木がくつろいでいる

風も穏やかで
青葉たちは沈黙し
時より微かな
笑みを零すばかり

木々たちの
落ち着いた佇まいや
遠い鳥たちの囁き
柔らかな朝の陽射しの中では

どんな人類の
喧騒すらも飲み込んで
夏の前の街は
刹那の風にすら
なりえないわたしにも

永遠のかけらを
垣間見せてくれる
止まった時間
夏の前の
ひとかけらの永遠……。


夏の前に許された今を
スケッチにして
ポケットに
しのばせておけたら

やがて来る
夏の暑さも冬の寒さも
容易(たやす)く生きていける
そんな気がする

蝉が留まる前の静けさに
木が、くつろいでいる

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