(詩)沖

波に運ばれ
沖まで流される
浮き輪のように

まだ
あそこにいる
まだ、あそこ
ほらやっと
あそこまで

そして気付いた時
もう遥か
沖の彼方に消えている

誰かを忘れる時


沖は記憶の水平線
失ったものは
沖の彼方にある

時よりだから
波に押し返され
ふと思い出してしまう

わたしの中にも
記憶を運ぶ波がある
遠い沖の彼方まで
わたしの中にも
海があって

だから泣きたい時
わたしはいつも黙って
わたしの中の
しおざいに耳を傾ける

そして
遠い夜の海の彼方に
星が消えてゆく時

わたしはしずかに
あきらめる

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