(詩)月曜日の夜明け

なぜ
波の音ばかり、やさしい

遠い沈黙の中に
寝静まった銀河の彼方に

今は酔っ払いもいない
日曜日明けのあるいは
正月明けの夜明け前の
新宿歌舞伎町前の
地下鉄駅前の
しずけさに似て

誰もわたしの行方を知らない
誰もわたしの行方を
捜さずにいてくれる
とおの昔に失った恋の面影
そっと思い出させないで
いてくれる

かろうじて
涙がまだ
胸の中に安らいでいる

まるで戦いに
明日は戦場へと
駆り出される兵士の
つかのまの休息に似て

すべてが今は
戦場から解き放たれた
涙が涙のままで
わたしの中で
あなたの影を抱きしめ
眠っている


なぜいつも
波音ばかりがやさしい

もう追いかけることも
見つけ出すことも叶わない
もう思い出すことさえ
願わずに

そっと眠り続ける
子どものように
わたしの涙はまだ
あなたの面影を
手放しそうにない

明日からまた始まる
いつわりとたたかいのため
わたしがあなたを
忘れたことさえ今は
そっと
忘れさせていてくれる

夜明け前のしずけさ
都会、東京の
月曜日の
夜明け前のしずけさ

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