(詩)あの子の夢

ピアニストを夢見る
一人の女の子がいた
ある日女の子はいつものように
学校から帰りピアノの練習をはじめる

一匹の野良猫が
彼女の家の庭に忍び込む
ピアノの音は空気を震わせる
空気の震えが
野良猫の聴覚に触れる
気分を良くした野良猫は
好きだったメス猫に
思い切ってプロポーズする

次の春
かわいい仔猫が生まれた
かわいい仔猫の赤ちゃんを見た作曲家が
曲を作った
コンサートでその曲を披露した
一番前の席で一人の女の子が
感動して涙をこぼした

その女の子とは
ピアニストを夢見るあの子

またその曲は
歴史に残る名曲となり
幾世代も幾世代も受け継がれ
人々を感動し続けた


もしかすると女の子は
途中で指を傷め
ピアニストには
なれなかったかもしれない
夢を捨て普通に就職し
誰かと結婚し平凡な人生で
一生を終わったかもしれない
或いはピアノを弾くことさえ
できなくなる程の苦しい恋に
打ちのめされてしまったかもしれない


野良猫の一家が気持ち良さそうに
春の陽の中で居眠りしていた
ただ幸福そうにね

だから夢は
この世界の中を循環する
世界中を駆けめぐる

夢はかなう

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