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(詩集)きみの夢に届くまで

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詩の数が多いので、厳選しました。っても多い?
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#涙

(詩)きみの夢に届くまで

この夜の何処かで 今もきみが眠っているなら この夜の何処かに 今きみはひとりぼっち 寒そうに身を隠しているから 今宵も降り頻る銀河の雨の中を 宛てもなくさがしている 今もこの夜の都会の片隅 ネオンの雨にずぶ濡れに打たれながら 膝抱えさがしているのは きみの夢 幾数千万の人波に紛れながら 路上に落ちた夢の欠片掻き集め きみの笑い顔を作って 都会に零れ落ちた涙の欠片の中に きみの涙を見つけ出せば 今も夢の中で俺をさがし求める きみの姿が見えるから この夜の何処かに 今もきみが

(詩)海の見えない場所では

海の見えない場所では 空を海と思えばいいのだ そもそも 空は海のふるさとなのだから 気体か液体かだけのちがい 涙のふるさとが海で 海のふるさとが空で だから すきとおった青い空を見ると 人は泣きたくなる 涙が 生まれ故郷をなつかしがって しかたがないのだ

(詩)小宇宙

肉体が人の大地なら 涙が人の雨で 愛が人の太陽なのだ 肉体がぼくの大陸なら 涙はぼくの海で ぼくという地球がいて そして宇宙は ぼくの愛で 出来ていたらいいな

(詩)一粒の大地の上で

舗装された歩道の片隅に 小さな雑草が生えていた そこに積もった 土だか砂ぼこりだか 分からないそこから 顔を出して その雑草には それが大地なのかしら 一粒のわずかな大地の上で 小さな雑草は 確かに生きていた やがて小さな花も咲くかしら 誰にも気付かれることなく 或いは無残に踏み潰されながら そんな一粒の大地にも吹く風に わたしはなりたい どんな小さな涙の粒にも 花を咲かせる栄養分は 詰まっていると信じて やがてわたしも この地を去ってゆく時 どんな小さな涙に

(詩)木洩れ陽になって

もしもいつか ぼくが死んで きみの涙が止まらない時 ぼくは草になり きみを笑わせよう ぼくは葉っぱになり きみを笑わせよう ぼくは蝉になり きみを笑わせよう ぼくは鳥になり きみを笑わせよう ぼくは仔犬になり きみを笑わせよう ぼくは野良猫になり きみを笑わせよう ぼくは風になり きみを笑わせよう ぼくはピエロになり きみを笑わせよう それでもだめなら ぼくは木洩れ陽になって きみの涙を 光に変えよう

(詩)やがて失われるこの世界のために

ええ、電車また人身事故? はあ、まいったね、まったく えっ、政治家が汚職ってか そんなん、いつものこったろ そのくせ俺たちには 増税、増税、消費税上げますよってか 何、ホスト狂いのねえちゃんが立ちんぼで ガールズバーのお姉さんは ストーカーに殺されたって あゝまったく狂ってんな この世の中、こんな世の中 まったくいかれた下らねえ うそっぱちの世界 WHOも国連も裏の顔は悪の手先 今日もうそっぱちの戦争で 子どもたちが殺され 人身と臓器が売買されている 海は汚染され、作物の種

(詩)青空が生まれる場所

青空を見ると いつも泣きたくなるから 青空は 夜の闇と星の光がひとつになって 夜明けの水平線の彼方で生まれた でもこの星も青い 地球は青かった しまった じゃ、少し訂正 青空は きみの涙から生まれた

(詩)もう夢は飛べなくても

たんぽぽの種が 蜘蛛の巣に引っ掛かって 飛べずにいる 翼を傷めたカモメは 地面から悲しげに 空を見上げるばかり 少女の頃 きみが見ていた夢 午後の陽射しがキラキラと 海の水に反射して 港はきらめきの中 埠頭に立って踊るきみ むかしバレリーナに なりたかったんだ もう、なりたくないの? もう無理だよ なんで だってわたしもう おばあちゃんだし まさか……。 まぶしい春の陽に バレエシューズをかざして きらめく海の光の中で きみが夢を諦めた午後 ねえ、一緒に

(詩)玉ねぎの涙

玉ねぎ切って流した涙でも たしかに涙には ちがいないから 泣き終わった後の すがすがしさは ほかの理由で流した 涙の時と同じだった だから今度 なぜだかわからず 涙が出てきた時は きっと心のどこかに 隠しておいた玉ねぎ うっかり 切ってしまったからだと 思おう なんとなく あなたのことが 原因だという気はしても あなたの面影の せいにはせず あなたの面影の せいでは決してなく そうやって ひとつひとつ 心の中の玉ねぎ 切ってゆこう そしていつか あなたのことを思

(詩)膝っ小僧

どうして名前に 「小僧」が 付いてるか分かった 苦しい時 ひとりぼっちの時 抱き寄せて 泣きそうな ほっぺ当てたら やさしく 慰めてくれるから

(詩)少女が虹を描いている

少女が空に虹を描いていた 色は七色で塗ってくれるかな 透き通るような青空にお似合いの けれど少女の虹は灰色一色 丸で憎悪に満ちたケムトレイルみたい 何かつらいことでもあるのかな この世界から 逃げ出してしまいたいのかな 少女が空に虹を描いていた 涙の色って何色だろ 少女の涙にも 虹が架かればいいのに たとえ涙色の虹でもいいからさ 少女が空に虹を描いている それでも少女が笑う時 空にはやっぱり 七色の虹が 架かっていてほしい

(詩)ぼくが海なら

死にたいきみへ 生きていたくないきみへ もしもおれがきみの 心臓の鼓動なら 今すぐにでも 止まってあげたい でもおれはただの 人間の屑だから おれが海なら きみの好きな夏の海でさ そっときみを つつんであげたい 生きもせず かといって死にもせず ただ 夏の空の下で つつんでいてあげたい おれがきみの、涙の海ならば

(詩)夢のカルーセル

記憶はカルーセル 面影を乗せた木馬 忘れた頃に またやってくる 涙はカルーセル かなしみを乗せた木馬 引いてゆくよ 笑い顔の予感と引きかえに 人生はカルーセル 忘れていても ちゃんと回っているくせに 知らないうちに、止まっている 人生は、夢のカルーセル 止まってはじめて 夢だと気付く 木馬の背中の なつかしい、いたみだけが 残っている

(詩)海に触ってみた

海に触ってみた くすぐったそうに 海が笑い返した 海に触ってみた 降りしきる雨のタッチで 海が 冷たいね、と言った 海に触ってみた 夕陽が当たって きらきら光るところ そこがわたしの ほっぺただ、と 海が教えてくれた 海に触ってみた 水平線を ゆっくりと渡る 船の感触で 遠くに行きたいって つぶやいたら 海が わたしもだ、と答えた 海に触ってみた くすぐったそうに 海が笑ってくれた ほおに落ちる涙で 海に触ってみたら わたしの子ども そんな所に 隠れて