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(詩集)きみの夢に届くまで

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詩の数が多いので、厳選しました。っても多い?
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2024年6月の記事一覧

(詩)夏の前のスケッチ

蝉が留まる前の静けさに 木がくつろいでいる 風も穏やかで 青葉たちは沈黙し 時より微かな 笑みを零すばかり 木々たちの 落ち着いた佇まいや 遠い鳥たちの囁き 柔らかな朝の陽射しの中では どんな人類の 喧騒すらも飲み込んで 夏の前の街は 刹那の風にすら なりえないわたしにも 永遠のかけらを 垣間見せてくれる 止まった時間 夏の前の ひとかけらの永遠……。 夏の前に許された今を スケッチにして ポケットに しのばせておけたら やがて来る 夏の暑さも冬の寒さも 容易(た

(詩)星に口付け

地球という大きな まんまるの中にみんないて 姿形を変えながら 生まれたり死んだりを 繰り返している 花には雨 蝶には花の蜜の恵み 野菜にも雨 人にも野菜、収穫物の恵み みんな地球の愛で 生まれ育ったものたち マザーアース みんな、あなたの子ども 蝶が花に 口付けするように そして蜜を頂くように わたしも この星に口付けしよう トマト、人参、じゃがいも、サツマイモ レタス、大根、キャベツ、ブロッコリー かぼちゃ、きゅうり、玉ねぎ、ほうれん草 とうもろこし、なす、ピーマン

(詩)木洩れ陽になって

もしもいつか ぼくが死んで きみの涙が止まらない時 ぼくは草になり きみを笑わせよう ぼくは葉っぱになり きみを笑わせよう ぼくは蝉になり きみを笑わせよう ぼくは鳥になり きみを笑わせよう ぼくは仔犬になり きみを笑わせよう ぼくは野良猫になり きみを笑わせよう ぼくは風になり きみを笑わせよう ぼくはピエロになり きみを笑わせよう それでもだめなら ぼくは木洩れ陽になって きみの涙を 光に変えよう

(詩)不思議生物

羽根のない天使 角がない悪魔 根のない草花 葉がない木 生き残った小型恐竜 巨大なプランクトン 動く粗大ごみ 働くナマケモノ 進化したサル 退化したサル 固体化した雨 融けない雪だるま 肉体を持つ風 光のない星 地上の雲 青空のかけら 不思議生物 ニンゲン その微笑みはダイヤモンド その涙は海のかけら やっぱり 不思議生物 ニンゲン

(詩)一粒の大地の上で

舗装された歩道の片隅に 小さな雑草が生えていた そこに積もった 土だか砂ぼこりだか 分からないそこから 顔を出して その雑草には それが大地なのかしら 一粒のわずかな大地の上で 小さな雑草は 確かに生きていた やがて小さな花も咲くかしら 誰にも気付かれることなく 或いは無残に踏み潰されながら そんな一粒の大地にも吹く風に わたしはなりたい どんな小さな涙の粒にも 花を咲かせる栄養分は 詰まっていると信じて やがてわたしも この地を去ってゆく時 どんな小さな涙に

(詩)心の風

雲は白い風 歌は声の風 虹は七色の風 風にも思いがある 風は 悲しみから喜びへと吹く 望みを込めて 風は 喜びから悲しみへ吹き返す 励ましと祈り 雲は白い風 歌は声の風 虹は七色の風 人は旅する風 夢は心の風

(詩)ホーム

何年も もう何十年もずっと ラッシュの人波を 支え続けて来た 大きな駅のホーム 毎日毎日 ラッシュの波と列と 人々の顔を眺めながら 笑い顔、黙った顔 泣きそうな顔、俯いた顔 怒った顔、顔、また顔の波……。 人の体は重いですか? やっぱり 人の人生も重たいですか? 意外に人なんて いなくなる時は あっさり、いなくなるのにね 人の命は地球よりも重い、なあんてね ホームドアが出来れば あなたが目にする悲劇も 少しは減るかも知れませんね そして一日一日 少しずつ人の顔が

(詩)天国と地獄

天国の人間には 地獄の苦しみは 分からない 地獄の人間には 天国の楽しさは 分からないように そんな 天国の人間と 地獄の人間とが ごちゃ混ぜで生きていて 天国の人間は 何の悩みも疑問も 待たないけれど 地獄の人間は いつも 悩みと疑問だらけ 何で俺、生きてんだろ? 俺なんか 生まれて来なきゃ 良かったのに……。 だから 救いって何さ? 教えてくれよ 救いって何よ? 教えて下さい、誰か もしも 地獄の人間を 天国の人間にすることが 救いだと言うのなら ノーサン

(詩)小宇宙

肉体が人の大地なら 涙が人の雨で 愛が人の太陽なのだ 肉体がぼくの大陸なら 涙はぼくの海で ぼくという地球がいて そして宇宙は ぼくの愛で 出来ていたらいいな

(詩)月に臨みて

生命(いのち)は何処からやって来る? 既に宿りし命に問い掛ける もうすぐ生まれ否 産まれ来る命に 問い掛けてみる きみは何処からやって来たの? どんな道を どんな旅をして ここまで辿り着いたの? どれ程深い闇の彼方から 弱々しくささやかな光に導かれ きみはどうやって わたしという大地を見つけたの? なぜわたしという星を選んだ? この宇宙と この星の上でめぐり会えた否 もうすぐめぐり会える喜びと ふたつの命が しばしひとつとして生きた 十月(とつき)の年月よ 十月(とつき

(詩)グッドナイト・モーニング

夜明けの星たちはどこへゆく まだ人影のない 駅のプラットホームから 列車にゆられかえってゆく 遠い銀河の彼方へと かえってゆくから 星たちには おはようがおやすみ おやすみなさいがおはよう 暗黒の闇の中に ふるえながら手さぐりで 肩寄せあう恋人たちのため おはよう今夜は 雲ひとつない銀河日和だ 時は流れ 夜明け前そして ひとつまたひとつ 恋人の胸にいだかれた 少女のほおに涙の粒が宿る時 ひとつまたひとつ 星たちは夜明け駅の改札へと急ぐ おはよう、おやすみなさい

(詩)夜空の星を見上げる時

幸あれかしと たとえばきみに 俺の祈りが届かない夜 幸すら儚く消え失せ 人生は無情 きみの前には 絶望だけが覆い被さる そんな夜にも たとえばオリオン座の 三ツ星だとかさ 無数の夜空の星の中の おんなじ星をおんなじ時間に きみと俺とが見つめるような そんな奇蹟みたいな瞬間があったなら その一瞬だけでも 祈りは届く 俺からきみに、なんてね そんな、わきゃないか それでも俺は諦め切れずに 今夜も遠い宇宙の彼方の 夜空の星を見上げている 無数の宇宙の星の中の たったひとつ

(詩)マッチでできたハーバーライト

灯った、灯った港の灯り しおかぜに吹かれて揺れる マッチの炎みたいね 誰かがふっと ため息吐いたら それだけで 消えてしまいそう 人はマッチの火が 消えてしまうのがさびしくて 電気をつくったのかな 灯った、灯った 海に沿ってまっすぐに どこまでも、どこまでも 灯るといい いつまでも、いつまでも 瞬いていたらいい ひとつの恋が終わるまで 人は 夜の海が見たくて 電気をつくった

(詩)傷だらけの恋

今はしずかに 海もひいてゆくから この夜のやみに 世界のかなしみ 見とどけるつとめを 銀河にゆずって ゆっくりと海も今 眠りへと かえってゆくから ぼくたちの 傷だらけの恋も 出会った頃は まっすぐで まっしろ、だったはずの 今はけれど きみの涙と ぼくのいいわけとで すっかり傷ついて つぎはぎだらけに なってしまった ぼくたちの恋の羽根を 今はこの夜のやみに しずかに閉じて 今はしずかに ひいてゆく海の 眠りにつくしおざいたちの 遠い、遠ざかってゆく 時の余韻