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(詩集)きみの夢に届くまで

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詩の数が多いので、厳選しました。っても多い?
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2024年4月の記事一覧

(詩)四がつ十七にち

さくらのきせつにちるなんて あなたらしい おかあさん きょうがあなたの あたらしいたんじょうび ※命日2022.4.17 ※個人的な投稿となり、申し訳ない。 母については姉に面倒を見てもらっていた関係で、殆ど顔を合わせることもなく、いきなり死んだと言われても実感がわかなかったです。けれど時が経過し、母子家庭で育ててもらった恩もあるので「ちゃんと供養しなきゃ」との思いにやっと至りました。 仏教の人間ではありませんが輪廻転生は信じているので、こんな戯言となりました。ご批判はあ

(詩)もう夢は飛べなくても

たんぽぽの種が 蜘蛛の巣に引っ掛かって 飛べずにいる 翼を傷めたカモメは 地面から悲しげに 空を見上げるばかり 少女の頃 きみが見ていた夢 午後の陽射しがキラキラと 海の水に反射して 港はきらめきの中 埠頭に立って踊るきみ むかしバレリーナに なりたかったんだ もう、なりたくないの? もう無理だよ なんで だってわたしもう おばあちゃんだし まさか……。 まぶしい春の陽に バレエシューズをかざして きらめく海の光の中で きみが夢を諦めた午後 ねえ、一緒に

(詩)鳩よ

鳩はいつも探している ぽっぽぽっぽと探している せわしなく 首を前に揺らして 鳩はいつも探している おなか空いたなあって ごはんを探している 鳩はいつも探している 俺寂しがりやだから 友だちを探している 鳩はいつも探している こんなことじゃ俺 いつまで経っても 象徴になれないじゃん 頼みますよ人類さん 鳩はいつも 平和を探している

(詩)散花

「さよなら」 風または 無風の空気中の ありがとうが含まれた さよならが好きさ 花が 風または 無風の空気中で 散っていく時 誰にも聴こえない わずかな空気の 振動の力を借りて ささやいたさよならが 聴こえた気がした それは 昔好きだった人に とうとう言えなかった さよならみたいで ありがとうが隠された さよならが、好きだった 花は散っても大地にちゃんと 種が 残っているみたいでさ

(詩)青空が生まれる場所

青空を見ると いつも泣きたくなるから 青空は 夜の闇と星の光がひとつになって 夜明けの水平線の彼方で生まれた でもこの星も青い 地球は青かった しまった じゃ、少し訂正 青空は きみの涙から生まれた

(詩)片隅の草の花のように

春なんて言葉も 知らない草木でも にこにこ 笑っている気がする 春は魔法のように 野に街に微笑みを 連れて来るから不思議 人見知りなきみは 高嶺の花であろうなど 望みもしなかったのに その容姿の美しさゆえ 男たちが放っておかなかった 他の女の子たちから妬まれた 何をしても 目立ってしまうきみは 段々と自分の感情を 押し殺していったね クリスマスもバレンタインも 嫌いになった 男たちは きみに真紅の薔薇や ゴージャスな蘭の花束を贈った きみに似合うと思ってね だけどき

(詩)追いかけっこ

春の海で遊んだね きらきらと光る波を追いかけ まだ冷たい海の水に 恐る恐る足を入れ 波と追いかけっこしたね 子どものように 少女のように はしゃぐきみの笑い声が まぶしくて 海の波がきらめくのは きみが笑うからなんじゃ ないかって思ったくらいさ そんな若かりし ぼくたちの日々 息を切らして追いかけっこ ただのかけっこなら きみに追いつけるから きみもぼくに追いついて 腕をまわし 背中をつかまえ 思い切りぎゅっと 抱き締め合ったね 絡めた指のぬくもりが やがてほどけて

(詩)潮干狩り

わたしたちを見たら 恋人同士だと 人は思うだろうか 互いに お目あての相手と 相手とがくっついて どこか夜のちまたに 消えてしまい、取り残されて 仕方なく帰りの山手線を 新宿駅のプラットホームで 待っている その男性とわたしと ふたり並んで そんなわたしたちを ここはまるで 週末の新宿の人込みは まるで遠い海のようね たえまなくつづく人の足音が なんだか しおざいのように響いてきて ふと、こんな五月前の ふるさとの海の 家族で行った潮干狩りのこと 思い出した 浮

(詩)散花微笑み

桜は直ぐに散ってしまうけど ピンクの花びらは風に乗って どこまでも飛んでゆく ピカピカキラキラのまま 飛んでゆく 娘よ だからきみ 絶望することなかれ きみの微笑みも 風に乗って飛んでゆく どこまでもどこまでも 飛んでゆく ピカピカキラキラの まんまでさ

(詩)永遠の日曜日

歌は音の集合体で ひとつひとつの音によって 成り立っているように 風景もまた ひとりひとりの人間や ひとつひとつの生命体や 物質によって 成り立っているのだけれど 多くの人はそれに気付かず 人間なんて 代わりは幾らでもいると 信じていて 確かに何かが欠けた時 けれど風景は 直ぐにそれを補い あたかも最初から そんな風景だった顔をして 何事もなかったように そこにあるのだけれど いざ自分に その欠けてゆく 失われゆくピースの 順番が巡り来た時 その時初めて人は気付く 誰

(詩)お父さん似

きみのお父さんを見たよ 偶然街でばったりとね とっても立派な人だった でもやさしそうだった きみみたいにさ 何だか急に 自分のことが恥ずかしくなった とっても敵いそうにないって とてもきみを 幸せになんか 出来そうにない気がして だからもう会えないって 今度きみに会ったら 言おうって決意したのに きみの顔見たら何も言えなくなった きみが お父さん似だったんだって 分かったよ きみの笑い顔見たら 何も言えなくなった

(詩)負け犬じゃない&人さし指

負け犬じゃない あんたは 負け犬なんかじゃない 負け犬ったって 人間のことだろ? なんで負け犬なんだよ? 負け人間でいいだろ? なんか、ことあるごとに 負け犬、負け犬って言うけどさ 本ものの負け犬が かなしそうな目で 「負け犬」って呼ばれた 人間を見ていた あんたは、負け犬じゃないから……。 そんな顔で、見ていた 人さし指 誰が名付けた 人さし指 おれ、そんなに 冷たいやつじゃないぜって そんな顔している 人さし指

(詩)風船

あなたの風船なら ずっと取っておきたい あなたの息で 膨らました風船 あなたの呼吸 ため息、愚痴、泣き言 あなたの笑い声が詰まった 風船だから そしていつか あなたを忘れる時 飛ばしたい 空の彼方に飛ばしたい あなたの生命が詰まった 風船を そして飛ばしたい 遥か遠い空の彼方へと

(詩)すずめと野良猫&公園のキャットフード

すずめと野良猫 雀がキャットフードをついばむ スナック菓子頬張る音をさせて こう見えても肉食派だぜ そこいらの野良猫にゃ負けねえぜ やせた野良猫は背中丸め ぼんやりと空を眺めている ふー、空でも飛びてえなっ……。 公園のキャットフード 誰か親切な人が 自分のために 公園の隅に置いていった キャットフードを 雀や鳩やカラスが食べても 野良猫は平気でいる それが自分の物だと 野良猫はわかっていないから しっとりと濡れたキャットフードが 雨風に洗い流されてゆく 明日、天気に