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(詩集)きみの夢に届くまで

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詩の数が多いので、厳選しました。っても多い?
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2023年11月の記事一覧

(詩)風と草の記憶箱

世界のどこかに 記憶の隠れ家がある 誰も知らない 記憶の隠し方 知っているのは風 風が草を揺らす時 記憶の一片(ひとひら)が 大気中に飛び散って 人はふと立ち止まり 懐かしさに、懐かしそうに ほんの一瞬だけ 忘れた記憶の匂いを嗅いで それから人はまた 何もなかったように 日々の暮らしの中に戻る 風が草を揺らす時 飛び散った記憶の集め方 人は知らない 掻き集め心に閉じ込めておく 術を持たない ただはかなしげに 懐かしいと、つぶやくだけ 風と草の記憶倉庫 風と草の記憶箱

(詩)住宅街の一角の安アパート

通行人の足音、おしゃべり 学校帰りの子どもたちの鼻唄 聴くともなしに耳に入って この場所も たくさんの人が住み、生きている 住宅街の一部なのだと思い出した どんなやつが住んでいるのかも 知られないまま 生きているのか、死んでいるのかすら 関心を持たれず されど若い季節の数年間を 確かにわたしも生きていた 閑静な高級住宅街の一角にある 安アパート 隣りの部屋には 貧乏だからと東南アジアの 四人家族が住んでいた あの子どもたちは 今頃何処で何をしているだろう 真夜中ひとり

夜空の不思議、地球の不思議

星たちは 本当はとっても離れているんだよ でもね夜空を見上げる時 みんな仲良く並んで 瞬いているように見えるから 不思議 パレスチナの子どもたちにも イスラエルの子どもたちにも おんなじひとつの夜空なんだ 星たちの方からだって おんなじなのさ 宇宙の片隅の この小さな小さな地球にいる 子どもたちはみんな同じに見える イスラエルの子どもたちも パレスチナの子どもたちも みんなおんなじ人間なんだ だから夜空の星たちは 不思議で仕方がない あんな小さな小さな星の上で どうして人

(詩)千年の孤独

きみに会えない一日は ぼくには千年の孤独 だからきみがぼくを強くする どんな苦しみも耐えるし 世界の果てにだって行ける きみに会えない一日は ぼくには千年の孤独 その千年をきみは どんなふうに過ごしたろう みんなとわいわいガヤガヤ 素敵な一日だったらいいな 千年分のさびしさは 全部ぼくが引き受けて きみに会えない一日は ぼくには千年の孤独 とは言っても ぼくだってそれなりに 楽しく過ごしていたから 心配はいらない きみに会えない一日は ぼくには千年の孤独 千年が万年にな