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(詩集)きみの夢に届くまで

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詩の数が多いので、厳選しました。っても多い?
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2023年7月の記事一覧

(詩)死亡通知

おとうさん 家族に迷惑を掛けまいと かあさんと離婚して 多額の借金とともに 姿を消したあなたは 行方不明だとか蒸発だとか 失踪者だとか呼ばれたまま 丸で犯罪者のように 陽のあたる場所に出ることは 一度もなかったのですね 昨日、日本の果ての 名も知らない町の役場から あなたが亡くなったことの 通知が届きました おとうさん 立つ鳥跡を濁さず、とは あなたのような人を言うのですね 誰も皆人間であるならば たった独りで 見も知らない何の宛てなき この世と呼ばれた世界へ 生まれ

(詩)沖

波に運ばれ 沖まで流される 浮き輪のように まだ あそこにいる まだ、あそこ ほらやっと あそこまで そして気付いた時 もう遥か 沖の彼方に消えている 誰かを忘れる時 沖は記憶の水平線 失ったものは 沖の彼方にある 時よりだから 波に押し返され ふと思い出してしまう わたしの中にも 記憶を運ぶ波がある 遠い沖の彼方まで わたしの中にも 海があって だから泣きたい時 わたしはいつも黙って わたしの中の しおざいに耳を傾ける そして 遠い夜の海の彼方に 星が消えて