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「Z世代こそ共感できる『斜陽』」

小中学生以降、読書習慣がまるでなかったZ世代の私が最近になって必死で本を読むようになった。というのも、今年の流行りどころではなく何十年も語り継がれて来た名作、誰もが教養レベルで知っている名作を知らない自分たちが人生の先輩の考え方や価値観を理解したり、近い目線で対話することはできないと思ったからだ。ましてアーティストであれば、名作を知らずに大人の心を動かせるはずがないとようやく気が付いたのだ。あと5年早く気が付きたかった。

▼最初は読み切れそうな薄い本から手を付けている。太宰治の『斜陽』もその一冊だ。物語の主人公・かず子が1人ではどうすることもできない苦しい状況の中で、悪い方向に考えを巡らせてしまう様子、自らに絶望する瞬間、後戻りできまいと前を向く瞬間など、女性の心がリアルに描かれていた。物語は戦後の怒濤の時代で、現代とは異なる状況ながら、Z世代の私でも共感できる要素が多かった。

▼Z世代はこれまでの上の世代とはかなり異なる環境・社会で育ってきたために、全く別の価値観を持っており、上の世代からは扱いづらいという印象を持たれている。良い意味でも悪い意味でも、インターネットを通じて多種多様な生き方を知ってしまっているため、今置かれている環境よりも自分がもっと輝ける場所、大変な思いをせずに楽しく生きていける場所を求める傾向にある。戦時や戦後といった厳しい時代や絶望的な状況を経験していないため、幸せで贅沢な悩みを抱えているとも言われる。しかし、一人一人が悩み、絶望し、必死に生きているのも事実だ。

▼何が悪いのか、何が原因なのかを一概に言うことは難しい。インターネットの普及により情報や価値観が溢れ、上の世代が経験してきたことや大切にしてきたものがZ世代に「届かない」、Z世代が「知れない」ということもある。だからこそ、名作を通じて私たちZ世代が新たな視点で人生を歩んでいける可能性を証明したい。

2024.01.10

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