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メンエス嬢漫画創作秘話・サークルクラッシャーと童貞と同調圧力

ウォーカープラスで連載中の「メンエス嬢加恋・職業は恋愛です」
は、1話16ページ完結のブラックジャック形式で、
毎回訳ありな男性客がやってきて、毎回いい感じに加恋が
癒してくれるという物語です。

現在第6話が公開中。
16ページというページ内で収まりきれなかった内容や
書ききれなかったこともありますので、
創作秘話と共にここに書き記しておこう!と思います!

童貞とサークルクラッシャーまたはオタサーの姫


この連載は、10話で完結しますので、
ようやく半分以上終わりました。

連載をはじめる前に、「どんな訳あり男性客が来店するか」ということは
被らないように、あらかじめざっくりとイメージは
固めておきました。

今回の、第6話の「女嫌いの男」の客の設定は
最初は「童貞同好会」のリーダーに
しようと思ったんですよね。

童貞であることが恥ずかしいとは一ミリも思ってない、
いや、むしろ、誇らしいと思っている
という「童貞だけど自信満々の男子」にするつもりでした。

そして「童貞同好会の仲間たちと仲良く男同士つるんで
女なんて必要ない!と仲間同士
楽しんでいたのに、ある日オタサーの姫があらわれて、サークルをぶっこわされれてしまった。そしてそれ以来女性を憎むようになってしまった」というプロットを作りました。

しかし…

童貞同好会に女性が入部するか?
という問題が生まれました。

それに「童貞」を押し出すと、
どうしても4話の「モテない男」と被ってしまう…。

何らかのオタク同好会にしたとしても、
やっぱり、4話の桜之坊氏とキャラが被ってしまいます。


そこで「童貞」や「オタク」というよりも、
「硬派」であるという設定にしました。
それならオタクなサークルではなく
硬派な剣道部、ということで
主人公のキャラも設定も4話と被らない!

16ページの読みきりができるまで


ここで、誰が興味あんねん?
とも思いますが、
私のマンガの短編の場合の作り方を簡単にご紹介します。

先程も書いたように、
まずはテーマを決め、大まかな設定、プロット、
キャラクターを考えます。

テーマを決めるときは、
いろんな本(心理学関係のものが多い)を読んで
使えそうなネタをひろいます。
そして本の中で著者が述べる興味深い内容を
ノートに書き写します。そうすると
だんだん「これをテーマにしよう」と
固まってきます。

本の中のエピソードをそのままつかうと
パクりになってしまうので、
自分なりによーく考えて
なるべく違う感じにしたり、膨らませたり
私なりの意見や考えを加えます。

(一つの本や一人の著者ではなくなるべく
多くの人のものを取り入れたほうが
片寄らないので、いいと思います)

そうして、材料ができたら、
ノートにざっと思い付くままマンガにしていきます。
まだこの段階ではネームとは呼べないほどの簡単な
ラフなものです。

でも、簡単なラフ、といっても、
ここの作業が一番重要で、
このときに、本当のテーマだったり
大事なセリフが生まれます。
よく「ネームが苦手で~」とか言ってる人がいるけど、
ここが一番大事なので、つべこべ言ってないで
真剣にやったほうがいいです。

ここでページ数や全体のテンポなどを
整えたら、やっとネーム用紙に清書します。

趣味で書く場合はネームの清書はすっとばして
下絵にとりかかってもいいですが、
仕事の場合、人に見せるものなので、
人物や背景もちゃんとわかるように描きます。

…とまあ、需要があるかどうかわかりませんが
いつもこんな感じで進めています。


しかし…

今回のこの「女嫌いの男」の場合、
テーマもキャラクターもプロットも、セリフも
だいたい決まったのに…

なかなかネームが書けませんでした。

なぜかというと、
「なんか、違う…」
「なんか、つまらない…」
「なんか、気分がノラない…」

という気持ちになってしまったからです。

でも、何度ラフを見返してみても、
「まあまあ、筋は一応通ってるし、まったく
おもしろくないわけではない」
と、いうのが自分自身の感想でした。

一体、なにが足りひんねん…

と、めっちゃ悩みましたが、
締め切りも一応あるし、
「ええい、もう、多少つまらなくても仕方ない!(そんな時もあるさ)
とにかくネームを仕上げてまえ~」という感じで
ネームを描きはじめることにしました。

でも、そこで…

奇跡がおきました。
(奇跡というのは大袈裟かな?)


偶然生まれたBL設定


ラフの時点でのプロットは、

主人公の硬場は親友と「女なんて必要ないよな!」と
いいながら共に剣道に打ち込んでいたけど、
突如あらわれたマネージャー(サークルクラッシャー)のことを
親友が先に好きになってしまった。
親友がマネージャーに恋していることを知りながら、
自分もマネージャーに性的に惹かれ手を出してしまった。
(つまり親友を裏切った)

という内容でした。

でも、このラフを元に、ネームを書き出したとたん、
自然に、めっちゃ自然に、親友のキャラが変化して、
「親友は密かに硬場に恋心を抱いている」(でもそれは硬場は気づいていない)
という関係性となりました。

これは自分で意識していなかったので
自分でもびっくり…。で、「これならイケる!」と思い
そのあとは、するすると筆が進み、
ネームを最後まで仕上げることができました。

親友も、硬場と同じ男性ですので…

これって、いわゆるBLというやつですよね。

私、まったくBLというジャンルは読まないし、
書かないし、
「萌える」という感覚もわからなかったのですが…

でも、自分で描いててこのお話で親友が硬場に抱く
感情はなんだか萌えました(笑)。

そこで、「あ、そうか」とわかったことがあります。

他人がこの作品を「あんまおもしろくないね」とか
「よくあるやつだね」とか
言うことは全然構わないのですが、
描くという上で、一番大切なのは
描く本人、つまり自分の気持ちであるということ。


私自身が、このお話が好きかどうか。
私自身が、キャラクターの関係に萌えるかどうか。
私自身が、このお話を誰かに伝えたいかどうか。


趣味ではなく仕事、となると、
もっともっとそれらが必要です。


そして、マンガを描いていて、もっとも
幸せだなと感じる瞬間は、
こんなふうに「キャラが勝手に動いてくれる」という瞬間です。

親友は脇役なので、名前すらつけていません。
(本当は、脇役にも名前はつけたほうがいいのですが、
このお話の場合は、名前を出すとややこしくなるから
つけませんでした)

私は描きながら、
「ああ、この子(親友)は硬場のことが好きなんだろうな~
でも、それを胸に秘めてたまま、絶対に告白はしないと
決めたんだろうな」と
自然に人物像が浮かんできました。


本編の中では16ページしかないので、
そこまでは描けないけど、
でも、描く側としては、キャラクターのことを
脇役であっても、そこまで考えて、
まるでどこかで本当に生きて生活しているのでは?と
思うくらい愛情をかけて描いてあげなければいけません。

なぜ、そうしないといけないか?というと、
もう、それははっきりいって
読者のためでもなんでもなく、
自分のためです(笑)。

私自身が、気分がのって最後まで描けるかどうか、
このお話を、私自身が好きかどうか、
が一番大切なことです。

(なので、もしPVがかせげなくても大目にみてください(笑))


これは、別に誰かに対して言っているわけではなく
自分に対しても、
あくまでも、備忘録なのですが…。

どんな短いお話であっても
趣味であっても仕事であっても、
自分が売れない漫画家であっても…


自分の描くマンガに責任をもとう、ということ。
最後まで諦めない、ということ。あと、

自分の産み出したキャラクターと物語と
愛してあげよう、ということ。



あと、このお話で最初に入れたかったことは、
集団の中での同調圧力についてです。

小学生のときって、男子同士、女子同士が
常につるんで行動していますよね。

男子であっても、女子であっても、
女子と仲良くする男子は、
「女子と仲良くすんなやー」とか、
男子と仲良くする女子は
「男子とばっかり遊ぶなんて、媚びてる」
とか同性に言われちです。
小学生の幼い仲間意識は大抵そんなもんなのですが、
仲間はずれというものを極端に恐れて
周囲に合わせるしかないという風潮は
大人になっても根強く残っていそうです。

そういう幼いころに芽生えてしまったままの
同調圧力というものも、
この話に入れたいなと思いました。

出来上がったあとは、

親友が硬場に抱いていた密かな恋心、とか
手当たり次第誘惑するサークルクラッシャーの心の闇とか、
単純すぎるがゆえ素直な気持ちを押し込めてしまった硬場の気持ちとか…

「恋愛」とテーマにしたマンガですが、
ただ男女が付き合ったり別れたり、という話ではなく
もっともっといろんな形で
自分らしい恋愛というものを
描いていけたらいいな、と改めて思いました。


最後まで読んでくださった方、
ありがとうございます。


次回の「メンエス嬢加恋・職業は恋愛です」
は、「孤独な男」。
65歳のイケオジ?のお話です!



メンエス嬢加恋はセルフラブを推奨しています。



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